ロク

運び屋のロクのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.8
花農場を経営しているアールは仕事仲間や周りからの評判は良いが家族より仕事を選んだ彼に対し妻や娘達は冷たくその関係は冷え切っていた。数年後、デジタル通販事業の台頭で経営が傾き自慢の農場も差し抑えられるなど厳しい状態に陥っていた彼に車に荷物を載せて運転するだけで大金が貰えるという話を男から持ちかけられ藁にもすがる思いだったアールはその仕事を引き受けてしまう。それがメキシカンマフィアのドラッグを運ぶ危険な仕事だとも知らずに...90歳の老人がドラッグの運び屋として逮捕されたというアメリカで実際にあった事件をベースに監督兼任としては実に10年ぶりに俳優としてスクリーンに戻ってきた名優クリント・イーストウッドが主人公アールを演じることで話題となった本作。第二次世界大戦に従軍した元軍人という部分こそ実在の人物と同じだが人物像は演じるイーストウッドの歩んできた人生と重ね合わせるかのように脚色されており、それが物語に深みを与え心に残る名作となっています。決められたルートでブツを届けないためブチ切れたメキシカンマフィアが拳銃を突きつけて脅す場面で“俺は戦争に行ったんだ!拳銃なんか突きつけられても怖くも何とも無い!撃てるもんなら撃ってみろ!”とダーティ・ハリー並みの啖呵を切ったかと思えば若い女性の前ではデレデレ状態になる主人公アールを情感豊かに演じるイーストウッドの演技は素晴らしく特に事件を通して長年疎遠となっている家族の大切さに気付き妻や娘達に不器用ながらも距離を縮めて行こうとする姿には胸に迫るものがあります。また、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、ローレンス・フィッシュバーン、ブラッドリー・クーパーなど脇を固める俳優陣の演技も素晴らしく弟子と呼んで可愛がっているブラッドリー・クーパー演じるDEA捜査官と初めて対峙するモーテルでのシーンは本作の名場面の1つだと思います。心地良い余韻が残るラストも含めアカデミー賞に何故ノミネートされなかったのか不思議なくらい映画史に残る名作の1本だと思います。オススメです!
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