原作の優れていた点は、音楽を言葉で表すことに成功していたところで、こう表現されてしまうと却って実際の音楽を使える映画というのは不利なのでは? と思っていた。
一番異論があるのは、小説には「結果どうなるんだろう?」という物語の推進力があったのに、この映画版にはそういうストーリーの面白さがあまりなかった点。端折るところは端折るにしても、エンターテイメント小説であり、青春群像劇としての原作の面白さを失わないでほしかった。
あと、キャラクターの解釈も、何か違ってしまった感じ(個人的には映画後半のマサルの行動がちょっと。そういう感じだったらあの結末にならんと思った)。
原作を読んで脳内補完することが必要な作りになってしまっている気もした。
しかし役者陣はメインキャラクター4名を中心にみんなはまっていたし、映像も雰囲気があって、監督が自分なりにこの作品を解釈しようと誠実に取り組んだことが伝わってくる丁寧な作りだと感じた。
異論はあるけど、観る価値のある映像化だったと思う。