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アシスタントのmoeshineのネタバレレビュー・内容・結末

アシスタント(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ポスターのショットもそうだが、主人公の女性をとらえた画面づくりがどれも決まっているな、というのが第一印象。
背景は普通のオフィスなのに、なぜか特別に見える。
彼女が着ているシアーなモーブピンクのトップスが、肌色にも合っていて、とても似合っていて印象的だ。

ただ、いくら似合っているといっても、ハラスメントが日常化している職場を描いた映画で、ピンク色のトップスは少し浮いているように見える。

とある一日を描いた作品なので、彼女の衣装はずっとこれ。
どうしてこの服を選んだんだろう、と思いながら観ていって、ある重要なシーンのあいだじゅう
彼女がコートを脱ぐことを拒否して、このピンクが覆い隠されていることに気がついた。
そのシーンの意味合いから考えるに、
ピンクは、彼女は女だし未熟だから軽ろんじて扱ってよいのだ、どうせ抗議もできないのだし、という周囲の目線を反射して表現している色なのではないかと思った。

フードの描写も印象的で、彼女は居心地の悪い場所で、あんまり体に良くないようなものばかり食べている。
食べきることすらできないものも多い。

給湯室で立ったまま食べる牛乳をかけたカラフルなシリアル。
応接室を片付けながら残り物の菓子パンをつまみ食いすれば、それを人に見られて気まずい思い。
同僚にUberが間違った品を届けたことをなじられながら食べるランチのサンドイッチ。
夕食に冷凍食品のグラタンをチンして食べ始めたところでもう帰っていいと言われ、グラタンはゴミ箱行き。
やっとの思いで退勤した直後に入ったダイナーのレジ横で売られているマフィンをボロボロこぼしつつ口に運びながら、彼女が見たものは…。

これらのフード描写が、こんなところで我慢してたって、彼女の将来のキャリアにとっては、ジャンクフードを食べる程度の栄養にしかならない、無味乾燥なものだと物語られているように感じられた。

ハラスメントなんだけど、ハッキリとしなくてなんかモヤモヤする…目をそらそうとすればできてしまう…周りもまったくサポートしてくれないわけじゃない、でも誰も味方になってくれない…というギリギリのラインがうまく描かれていて、あからさまなハラスメントよりかえってタチが悪い。
それを変えるには、こうして地道にその「嫌な感じ」を可視化していくしかないのかもしれない。
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