SANKOU

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ある大富豪であるミステリー作家ハーラン氏が喉をナイフで切って自殺した。
警察の事情聴取に答える身内の人間や使用人たち。そこに警察の人間ではない風変わりな男が混じっている。彼の名前はブノワ・ブラン、優秀な私立探偵だ。彼はこれをただの自殺ではない殺人事件と見て捜査に乗り出した。
前半の様々な人間の証言を交えながら、事件当日の様子を浮き彫りにしていく様は観ていて面白かった。
そして、実は事件の日に起こった事実は早いうちに判明してしまう。
そこから始まる犯人(と言ってよいものか)とブラン探偵との攻防。果たしてこの後どのような展開を迎えるのか。
ミステリーで犯人の側から描いた作品は数多くある。犯人の主観で描かれるこれらの作品は、やがて名探偵と呼ばれる人間に鉄壁だと思われたトリックやアリバイを見破られ次第に追い詰められていく犯人の心の動揺に観客は感情移入させられる。
しかし、この映画はそれらの作品とも違った印象で、最後に何か仕掛けをしているのではないかと思わせる。
とにかく秘密だらけで人格に問題のある一家の人間模様がドロドロしていて凄まじい。
嘘をつくと吐き気を催してしまうという看護師マルタの特異体質が、色々と物語の展開に影響を及ぼしていて面白かった。
ブランの「この事件は穴のあいたドーナツのようで、その穴を埋めたと思ったものがまたしてもドーナツで穴があいている」という言葉が印象的だが、まさにこの作品のからくりを表していると思った。
アガサ・クリスティーのような世界観に最後の種明かしにはスッキリしたが、物語の展開上中盤あたりがもったりしていて残念だった。
事件の真実をどう扱うか、そんなことよりもハーランの遺言で自分たちにどれだけの財産が分与されるのかに興味のある一家の人間たちの姿が滑稽だった。
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