LEONkei

We Margiela マルジェラと私たちのLEONkeiのレビュー・感想・評価

3.3
姿を見せないことによって存在する。


マスメディアを拒絶し表舞台から身を隠し続けそして静かに去ったファッションデザイナー〝マルタン・マルジェラ〟は今何処で何をしているのだろうか…。

コンセプチュアル、デストロイ・コレクション、脱モード…、既存の概念に囚われない前衛的で実験的なコレクションは称賛と悪罵の両極端な評価が逆に熱狂的なファンを生んだ。

黒の衝撃〈COMME des GARÇONS〉や〈Yohji Yamamoto〉がシンプルなフォルムも斬新で美しいシルエットを生み出し日本の高い縫製技術の伝承する自分も好きなブランドの筆頭。

その〝マルタン・マルジェラ〟も〝川久保玲〟を崇拝し憧れを持っていたように表現手法は違っても、斬新な衝撃度は脳内分泌液が全身の毛穴から溢れ出しそうな感覚。

記憶は曖昧だが〈装苑〉か輸入版〈iD magazine〉で初めて見たときのインパクトだけは記憶に残っているものの、斬新なだけに好き嫌いが激しく全ての大衆に受け入れられた訳でもなくマスメディアにも嫌われた。

彼を囲む人々はマルタンの創作に関しては誰もが尊重し納得し協力を惜しまなかったが、ブランドの影響力が肥大すると経営面と創作面の壁と矛盾に揺らぎは訪れる。

彼は何も狂気で希代なデザイナーだった訳ではなく正気で生粋なアーティストだったことは、彼は常に自分の存在を〈We(私たち)〉と表現してたことに尽きる。

しかし静かに去った彼は〈We〉を自ら躊躇なくサッと捨てた理由は、絶望なのか失望なのか創作意欲を失ったのか…、もし仮に聞けば『意味なんてないよ』と答えそうな気がする。


現在〝ジョン・ガリアーノ〟の〈メゾン・マルジェラ〉も魅力的な創造性で既成概念に囚われないモードを展開しているが、創造と創造の比較は下品で低俗なマスメディアの戯言でしかなくマルタンには興味すらないだろう。

彼は・私たちは何処にいて何をしているのだろうかと考えがちだが、そっとしておくのが彼への思いやりかも知れない。


姿を見せないことによって存在している..★,
LEONkei

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