marohide

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のmarohideのレビュー・感想・評価

2.0
 少々期待しすぎたのかもしれない。2の最後に提示された恐竜との共存というテーマや、ジュラシックパーク時代のキャラクターのカムバックという情報の中で期待するなと言う方が難しい話ではあるが、その期待を満足させるだけの力はこの映画から感じられなかった。

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 映画前半、人間の生活圏に当然のように恐竜がいる風景は確かに物珍しく、異国風味の舞台も面白かったが、展開されるストーリーはスパイ映画のようである。別に人間同士の銃の撃ち合いには興味がないんだよな、と思いながら見ていた。
 恐竜の登場により変更が余儀なくされた人類の秩序や価値観。自分が見たかったのはそういう描写や世界観だ。兵器として飼いならされた恐竜をいくら見せられても、それは単に銃を使うか恐竜を使うかという問題でしかなく、道具の変更に過ぎない。

 後半は企業による陰謀の阻止が話の中心となるが、これも盛り上がりに欠ける。舞台が研究所となってしまったため必然的に展開はパークと似たものになり、目新しさがない。
 前作のラストを見て、「なるほど、だからジュラシック“ワールド”か…!」と一人興奮したものだが、これではやっていることが今までと同じ。世界に恐竜が拡散した設定を活かしきれていない。

「ジュラシックワールド」シリーズは、「パーク」へのリスペクトやオマージュがいたる所に感じられつつ、それでも独自の映画を作っている部分が自分の中で評価していた点だった。
 架空の恐竜を出すという1の試みによって恐竜から遺伝子に焦点を動かすのも面白かったし、2のゴシックホラーのような雰囲気も新しかった。それだけに、完結編の3が焼き増し感の強い出来だったのは実に残念。

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 そもそも、恐竜との共存という課題に対する回答としては結論が弱すぎやしないか。恐竜の闇取引や恐竜による死傷者問題はなんら解決していないし、あのままなし崩し的に共存が出来るとも思わない。人間側がもっと苛烈に駆除しようとしたりするだろう普通は。
 圧倒的に力があり、しかも対話不能な恐竜という存在を前にして、なお闘争ではなく共存という道が取れるのか?どのような手段で?そういった部分がテーマとなるはずだったのに、「人間すら自然の一部」などと言われても納得できない。2の終わりから何か進歩があっただろうか。

 そういえば恐竜との対話と言えば、オーウェンの手をかざす例のポーズはあんなに万能な技だったか?
 あれはブルーとの時間をかけた信頼と絆によってギリギリ成立しているものだと理解していたが、今作では決めポーズのように皆して恐竜をいなしていた。
 2ではそれほど気にならなかったがどうだっただろう。確認してみる必要がある。恐竜はもっと手に負えない存在でいてほしい。

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 キャラクターの使い方も微妙。シリーズファンとしてはグラント&サトラー両博士の活躍に期待していた。パーク時代から歳を重ね、専門的な知識豊富な彼らは、パーク1,3作目とはまた違った活躍をしてくれるのだろうと。
 ところが、与えられた役割はオーウェン&クレアと差別化出来ておらず今ひとつ。やったことはイナゴのDNAの確保などで、恐竜に対する専門知識などを披露する場面はあまりない。
 体力的には衰えながらも知識と経験で若いオーウェンをサポートするグラント。そういうのが見たかったんだがな。

 グラントとサトラーの関係性の描き方も満足出来ない。個人的には、あれ程の死地を共にくぐり抜けながらも破局してしまった二人、それでいてお互いへの尊敬を失わない二人が好きだった。
 もちろん、二人がよりを戻す展開自体はありだと思うし、なんなら少しそうなってほしい気持ちも自分の中にあったが、それはそこに至るまでの説得力がある事が大前提である。時間の経過による心境の変化などがもっと丁寧に描かれていれば手放しに祝福できたものを。

 Tレックスの使い方も良くない。最後の最後に出てきてデウス・エクス・マキナ的に主人公たちを救う展開はもう何度もやったでしょう。そもそもあれは、人間にも容赦なく襲いかかるTレックスが気まぐれに危機を蹴散らしてくれる所に畏怖やカタルシスを覚えるわけで、重役出勤のように最後だけ顔を出したとしてもそこにはオマージュ以上の価値はなく、そのオマージュすら前々作でやっているのだから本当に意味がない。
 せっかくシリーズのTレックスは作品を通して同一個体というおいしい設定があるのだから、もう少しグラントらとの絡みがあってもよかったのに。

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 不満は多かったが、それでもサム・ニールが演じるグラント博士を再び見れただけで単純に嬉しかった。初代の三人が並んだだけで感動してしまったのも事実である。だからこそ余計に悔しい。
 近年の映画界はかつての名作の続編が制作される動きをよく見る。ファンは当然期待するわけだが、人気シリーズを引き継ぐのは難しく、綺麗にたたむ事はなお難しいということが改めて示されたと言えるだろう。

 良いところも探せば色々あったが、新作としても、完結作にしても、あるいは同窓会映画にしても、どれにとってもあと何歩か足りない。非常に惜しい出来だった。1,2は好きだったんだがな。悔しい、悔しいね。
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