アキラナウェイ

ウエスト・サイド・ストーリーのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.2
およそ60年の時を経て銀幕に蘇る物語。人種間による争いに引き裂かれる恋と、失われた尊い人命。

オリジナルを鑑賞した上でのリメイク鑑賞は、ストーリーが頭に入っている分、新旧の相違点や歌と踊りに集中出来て良かった〜!!

舞台はニューヨーク、ウェストサイド・マンハッタン。ポーランド系アメリカ人で構成される非行グループのジェッツと、プエルトリコ系のシャークスとの抗争の最中で、人種の隔たりの中で翻弄されるトニー(アンセル・エルゴート)とマリア(レイチェル・ゼグラー)という男女の悲恋の行方は—— 。

取り壊されていくスラム街を俯瞰的なショットで捉えたアビンタイトルから、もう、あの街への没入する感覚がある。

圧倒的にパワーアップしたのは、歌とダンスパフォーマンス!!現代の映像技術の助けもあって、何せ壮大!!

オリジナルでは、屋上の狭いスペースでのパフォーマンスだった"America"が、街に繰り出して、ストリートで歌い踊るパフォーマンスへとレベルアップ。

アカデミー賞助演女優賞に輝いたアリアナ・デボーズの躍動感が凄い。オリジナルでは徹底出来なかった、ルーツを辿った上でのキャスティングという意味で、プエルトリカンの血を引く彼女の存在感は大きい。

そして言われないとわからない、オリジナルでアニタ役を演じたリタ・モレノがリメイクでカムバックとは、また粋な事をしてくれる。オリジナルでのドクは亡くなったという設定で、その妻バレンティーノ役での起用。女性、かつプエルトリコ人という設定にした事でトニーやアニタに寄り添うメンター的役割が強くなっている。

脇を固めるキャスト陣に文句はないが、アンセル・エルゴートだけはどうにも違和感が。札付きのワルには見えないベビーフェイス。踊り階段の格差で誤魔化せてはいるが、マリア役レイチェル・ゼグラーとの身長差。申し訳ないが、動きの少ないその表情筋(仏頂面とも言う)から、パッショナブルな愛は伝わらないんだが。

気になっていたポイント、その①。

オリジナルで"男勝りの女性"として描かれていたキャラクターについて。

今回ははっきりと「私は男性でも女性でもない」という台詞を言わせる事でLGBTQ+の流れを反映させている。演者(アイリス・メナス)も実際にノンバイナリーという徹底ぶりは流石。

気になっていたポイント、その②

アニタが男達に罵られ、辱められるシーンは特に改善なし。新旧問わず、ここは胸糞だけど、これが抜けるとストーリーを変えざるを得ないので致し方ないかな?

新旧比べて良し悪しは確かにあるけど、兎にも角にも、これはスピルバーグ監督が描きたかった"夢"。

幼少期に感じたヴァイブレーションをその胸に温め続け、歳(よわい)70代にして実現させた事自体は評価したいし、ミュージカルとしては格段に迫力が増しているので、スコアはオリジナルより少し高めで。