矢吹健を称える会

ウエスト・サイド・ストーリーの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

4.0
 はじめて見たとき「オリジナルには劣る」という評判を目にしたので、なるほどと思いロバート・ワイズ版を観賞したのだが、どこも劣ってない。ってか、何もかもロバート・ワイズ版より勝っとるわ。

 で、今回2回目を観賞。冒頭、都市再開発の荒涼たる現場から、ジェッツ諸兄がのそのそ出てきて街を闊歩するシーンの、画面のざらざらした感触が本当に素晴らしい。
 さらにアリアナ・デボーズの登場で、画面が一気にダイナミックに花開く。"Dance at the Gym"での集団演舞もさることながら、圧巻なのは"America"における爆発的なパフォーマンス! この人の踊りの迫力は、ロバート・ワイズ版はもちろん、よりアップデートされた本作のすべての出演者に勝っていると思う。
 ただ、J.J.エイブラムスが一般化した、カメラに逆光が映りこむ演出が多用されるのが個人的に煩わしく、アンセル・エルゴートとレイチェル・ゼグラーが邂逅するシーンなんか「別にこれ要らんだろう」と思ってしまった。その後、アンセル・エルゴートが街をさまよって、水たまりの上で"Maria"を唄うシーンなんか本当に見事なのだが。

 エンディング、街に朝の光が射すショットがあまりにも「名画感」をたたえていて、うっとりしてしまった。