田中宗一郎

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りの田中宗一郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

北米圏のメジャースタジオが得意とするファンタジー設定の、終始コメディタッチの、美術、撮影、編集という点からも特筆すべきところも特にない、そこそこよく出来たブロックバスター映画。テーマ的には、コミュニティや社会への貢献に夢中になるあまり、家族や愛する人たちを蔑ろにしてしまう男性性/父性の有害さという手垢のついたものでしかない。

でもさ、このトキシックな構図ってさ、ウォークカルチャー以降の、社会意識、倫理観を大切にするあまり、大衆文化/ポップカルチャーにとってもっとも大切なはずの、どんな社会属性を持った観客に対しても等しく興奮や喜びや勇気を与えるという役割がすっかり蔑ろにされている2020年代的状況のアナロジーに期せずしてなってるんじゃない?なんて思ったり思わなかったり😆。

総じて、ホント大した作品ではないわけです。ショット繋がっていかないしさ。ショットの繋がりで物語を語るわけでもないしさ。コンピューター使って精密に画面設計した擬似ワンシールワンカットとかやっぱつまんねーって思っちゃうし(ただ、同じ擬似ワンシーンワンカットでも『ガーディアンズ』最終作のそれよりは遥かに良かった😊)。

ただ、形式においても主題においても特に志の高いことは敢えてやろうとはしないという点において、とても高い志を持った作品。しつこいくらいの下らない冗談の連続に何度もゲラゲラ笑ったし、思わず何度も涙ぐんだ。心の底から楽しみました。

かつて2010年代に、JJエイブラムスがゴミのような『スター・トレック』映画をリブートし続けている、そんな時代に公開されたMCU映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に大興奮し、「俺が観たかったのはこれだよ! そもそも『スター・トレック』は“他者への信頼”についての作品なんだから、価値観も出自もまったく違う者同士の信頼だけが生み出す力を描いた『ガーディアンズ〜』こそが現代の『スター・トレック』なんだよ!」と感じたことも今は昔。

他者への信頼ではなく、愛する存在への執着(それは愛ではない)の映画に堕してしまった『ガーディアンズ〜』最終作が失ってしまったもの、そのすべてがここにはあります。
田中宗一郎

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