映画漬廃人伊波興一

動脈列島の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

動脈列島(1975年製作の映画)
4.1
2年後に五輪を控えた今、こんなピカレスクを楽しんでみよう 増村保造『動脈列島』


例えば10年近く放り出され、もはや大根ひとつ切れそうにない刃でも強い毒を含んだもので研げばこびり付いた錆など簡単に落ちる事でしょう。
しかも単に落ちるのではなく毒そのものまで刃に染み込めば手のつけようもない。

囚われの身となりながらも彼の為なら、と沈黙一切を守る関根恵子や、行きずりとはいえ、運命の出逢いと感じる梶芽衣子など、どちらかひとりでもモノに出来れば男冥利に尽きそうな相手さえも実行手段に利用してしまうのはその毒性ゆえ。
近藤正臣の真ん丸い瞳の奥に浮き上がる蜘蛛の巣状の血管が物語っております。

本作では彼の内なる刃にこびり付いた錆を落とした毒は(70年代騒音公害)が背景にありますが、複雑怪奇な今の時代なら(偽善)という錆を一瞬で溶かす毒はSNSを通じて安息の場である家庭まで蔓延しているのは周知の通り。
大阪万博と並び高度経済成長のシンボルであった東京オリンピックを再び2年後に控えた今、見直す価値アリ満点の面白いピカレスクてす。
私自身30年以上前にテレビ放映を観た時はここまで面白い映画とは気づいてませんでしたがwww.