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きみと、波にのれたらのjonajonaのレビュー・感想・評価

きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)
4.0
夜は短し歩けよ乙女、四畳半神話体系の湯浅正明監督作品。

死んでしまった消防士の恋人が
水の中に幽霊になって現れるお話。
大変よかった。

○GOOD
・前振りが長い、とも取れるけど彼氏が死んでしまうまでに2人の愛が育まれていく過程がしっかりと描かれてたのが大変よかった。コーヒー、オムライス作るのがうまいカレ。波に乗るのがうまいカノジョ。見え見えだけど後半の前振りになるコテコテのデートシーンも幸せ。

・恋人が幽霊になって現れるお話、ときくとゴーストを連想するけど、周りの人からは気が触れたと思われたり、というかそうとしか見えない他人の目を感じさせる描写が随所に挟まれてて切なさを書き立てた。スナメリの水浮き輪を彼氏に見立てて街中に出歩いたり…一見本当に愛に溢れた再会の喜びに満ちたシークエンスな分余計にキツい。ここでは思わず泣いてしまった。

・そんな意味でも彼氏のスナメリとお部屋でダンスするシーンがこの映画の白眉。

・彼氏が死んで家に篭るシーンの主観視点で足を見つめて頭を自分で撫で続ける描写はかなりキツかった。いい。

・喫茶店がめっちゃ憧れるデザイン。あのエレベーターかっちょよいわ。

・脇を固めるワサビくんや妹ちゃんが可愛い。女友達2人もなんかいい子そう。

・主人公と彼氏の性格の違いや相手への憧れの鏡像関係が伝わりやすかった。過去の思わぬ出来事も含めて運命的なふたり。

・いうまでもなく動きのある描写はどこを切り取ってもピカイチ。

・ルーの魅力でもあったけど、田舎や街を切り取って魅力を引き出すのが1番うまいアニメ作家だと思う。

○bad
・ルーが個人的にはハマらなかったけど、今作に感じた事とも同じ理由で少しつっかえてて。ここ2作品の傾向として共感できる間口をやや広げすぎてるきらいがあるなぁ…と。完全に個人の願望だけど湯浅監督にはドグサレ学生やマインドゲームの時みたく思想的にもぶっ飛びまくった作品を撮り続けてほしい🙈笑

・斉藤和義は大好きだったのでルーの時はエモく感じたが『ファンじゃなかったらこのマイナーな曲センスはどう感じるんだろう?』と気になって、今作で答えが出た。やっぱりちょっと曲が微妙…のれない、と感じてしまった笑
でも普通の人が聞く曲なんて、人それぞれで、それこそ大衆向けの楽曲ばかりが2人の共通言語になるわけもなく。そういう意味では非常に反骨的というかパンチな精神を感じてこの曲センスも嫌いじゃない…

・ラストの火事からの救出でおきる奇跡は、周りがもっと驚いてもいいんじゃなかろうか?それまで観客としても彼女が狂ってるって疑いは捨てきれないし、そこを超えてく言っちゃえば魔法的なシークエンスなので驚きをもっと誇張して欲しかった。

○感想
・悲恋の愛の映画ですが、見ようによっては失恋映画とも取れます。恋愛中のカップルはすぐずっと一緒だよ♡とか言いますからね。そのあとその想いをどう引き摺るかって部分は失恋にも共通してる。
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