Taiga

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのTaigaのレビュー・感想・評価

4.4
「ジョジョの奇妙な冒険」の作者、荒木飛呂彦先生が言っていた、この世で最も恐ろしいこと。
それは、先祖からの因縁や呪いに対して責任を背負わされること、だと言う…。


化石燃料と共に巨万の富を手にしたオーセージ族が次々と不審な死を遂げる。
彼らの生命と私有財産が食い荒らされていく裏では、無限に膨らんでいく欲望を抑えることのできない白人たちの影が暗躍していた。
増え続ける犠牲に喘ぐオーセージ族のモリーは、夫のアーネストに肩を寄せる。
彼もまた、自分らに毒牙をかける側の人間だと知らないままに…。

教会に通い、新たな宗教観や思想を持つニュータイプのインディアンなモリー。
彼女が一連の事件から容易に逃れることができなかったのは、自然崇拝で取り分け大地に対して強い信仰心を持ち、容易に土地を離れることができなかったオーセージ族のしきたり、そしてかなり強い帰属意識が一因していたと思う。
確かに帰属意識や信仰心とかって美しい側面もあるけど、人が生きていく上で呪いや足枷のようになる場面もあるんだよな。

民族が父と慕い強く信仰している火。
火災保険のカラクリを利用して、火を使って虚言のボヤ騒ぎで荒稼ぎする文明的と言われる白人。

オーセージ族の風土や風俗の美しさ、対比する白人の狡さや皮肉。
またそれだけではなくて、嫌な汗が出そうな人間のエゴや愛憎が三時間半という長尺なクライムサスペンスと共に紡ぎ出されていたので、非常に見応えがあった。

これは見紛うことない"シネマ"ですわ、先生‼︎

凄惨な事件や出来事もいつかはエンタメに昇華される。
あの展開はそれを物語ってるのかしらね。
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