takato

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのtakatoのレビュー・感想・評価

4.0
blackholeでずっとスコセッシ論やってたこともあるので当然鑑賞。本作の凄いことの第一は、3時間半ちかい(七人の侍か!)な尺の間で全く集中力を切らせず疲れないで見せる、語り口と映画上手漢(えいがうまお)力の高さである。blackholeで指摘されていた昔はあった大きな地平が拓けている場所を撮る上手さも開幕から炸裂してて唸りました。


 ただ、最高!ってなったかというと難しい感じでした。基本的には「グッドフェローズ」とかから連なるDr.マクガイヤー氏が評するところの「激安犯罪者」の物語なのですが、そこにあった一種の暗黒青春ものというか、出鱈目で悪逆非道なんだけど俺たちに成り上がるぜイェ〜イ!という楽しさ、或いはそこから転落して後はもうショボショボ人生…という落差が産む侘しさみたいな感情を猥雑なんだけど感情を揺さぶられる感じが少々弱かった。


 本作は、スコセッシとしても自分の集大成としてスケール大きく格調高く、かつ今でも繰り返されているインディアンだけなく自分とは関係ないし…で色んな事がスルーされたり忘れ去られちゃうことに対する抗議という志の高さもあってか、正直酷ぇことが起こってるけど、この監督ノリノリである…っていけない楽しさがこちらにも感染してくる強さに欠けるように思えた。それがあるからこそ、終盤にかけて落ち目になっていくところで落差があまり生じてないような…。


 やはりもう一人、ジョー・ペシに代表されるイかれてる困った人が中心にいてトライアングルを組んだ方がバランスとれたか、ディカプリオがやたら家族のこと言ってるんだから子供たちの絡みをもっと深くすることで、もっと絶望を味あわせた方が興味深かったかな。


 今までのスコセッシ犯罪映画よりスコセッシがキャラクターたちから少し距離をおいて、事件の総体ひいた視点で撮ろうとしたのが自分にはちょっと噛み合わないものを感じました。これだったら旧作の名作のが楽しいし、絶ってことなら韓国映画の方がより突き刺さり過ぎなものがあるかと。


 凄い作品だとは思うが、「俺のじゃないなぁ〜」という印象でした。スコセッシには悪いかもですが、やはりこの人は下品なくらい勢いがある作品をノリノリで撮ってる時のほうが輝いているんじゃないかなぁ〜。
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