Kuuta

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのKuutaのレビュー・感想・評価

4.1
・モノローグを除いて黙るモリー、オセージ族と聖書の言葉を借りるヘイル、ヘイルの言葉を鵜呑みにするアーネスト(黙れと言われても黙らない)、歪んだニュースを伝えたかつての映画。

スコセッシは沈黙してきたオセージ族の言葉を、神の代わりに自分の映画で伝える。

しかし、そうした姿勢もまた白人プロパガンダだというエピローグ、それでも生き延びたフラワームーンを見守るラストショット、観客に「嵐の前の沈黙」を強いるエンドロール。この三連発に痺れた。

・スコセッシ作品お馴染みのロビー・ロバートソンが音楽を担当。彼はThe Band脱退後、カナダの先住民の血を引いていること(母がモホーク族)を公表し、伝統音楽に接近した経歴を持つ。

しかしこの題材がロビーの遺作になるとは…。過去作を引用しながらフィルモグラフィーの総決算を進めている感のあるスコセッシ。エンドロールを見ながら「この爺さんラストワルツまで回収しやがった」と思った。

・ジャックターナーとアリアスターを意識したという、真綿で首を締められるようなゆったりホラー風味。冒頭の牛の群れ、広い大地にテンションが上がった。燃える農場の撮影どうやってるんだあれ

・ブレンダンフレイザーに詰められる場面、入った瞬間の部屋の暗いこと。街ぐるみの腐敗構造、開拓時代という神話が終わり、澱んでいくアメリカ。八方塞がりな土地が毒に侵され、自壊していく。

・殺人と嘘を繰り返す一方で、子供の死を知ると神に祈る、都合の良い振る舞い。最後まで黙ることができなかったアーネストを捉える、半端なカメラ位置。二つの世界に板挟みになった人間のダメさ、弱さをこれでもかと叩きつけてくる。こういう瞬間を映し出せる人だからスコセッシの映画を見続けている。82点。
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