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BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-のくりふのレビュー・感想・評価

BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-(2019年製作の映画)
2.5
【ピンキーバイオレンスゼロ】

原作漫画は少し読んだことがあり、このネタを東映が実写化するならもしかしてオモロイかも…とレンタル。

まぁ期待は通常通り外されたが、予想外にオモロイ部分はあった。

ヤクザの若衆がヘマした落とし前に、性転換&全身整形して再生、組の資金源となるため、女性裏路地アイドルグループとして強制大活躍?させられる苦笑コメディ。

原作者はそこまで意識しなかったのだろうが、実写化すると、実に面白いネタだったのだなあ、ということが際立ち、感心してしまう。

・ヤクザとアイドルは、ある妄想に理想を求める構造が、実は近しい。
・欲望産業と見ても、ヤクザ業とアイドル業は、実はおんなじ(笑)。
・性転換されることで顕わになる性差の問題、揺さぶられる漢らしさ。
・整形大国韓国ならホントにありそうなお話(笑)。

…などなど。

こうしたテーマに真正面から切り込んだら傑作になったと思うし、より笑えたはずだが、例によって物語の上澄みすくっておしまい。毎度のことながら、日本映画はもったいないコトするなあと思う。

東映ピンキーバイオレンスの命名者?杉作J太郎がこのゴクドルズを、PVの正統派後継者と讃えているようだが本音だろうか?

現代だと、どうしたってこうなっちゃうのかね? 特に#MeToo以降だと。

彼の著書の惹句が“女が脱ぐ!女が戦う!そして女が勝利する!”だけど、初めの一句が本作にはゼロ。単身、全裸で日本刀振り回し、男どもをなぎ払っていた池玲子に謝んなさい、とか思っちゃうのだけれど。

唯一面白かったのは、カワイイアイドルとしてウケちゃった自分への、若衆らの葛藤。トイレを舞台に、過去の自分と爆笑対峙する様が、笑っちゃうほど映画的。バトルやアイドル活動シーンよりずっとオモロイ見せ場で、本作の要だった。この質が全篇に行き届けばなぁ。

若衆役もアイドル役も、あまり光る人はいないので、せめて組長役は、演技が達者なオモロイ人で締めてほしかった。岩城滉一じゃ、鍋の底に穴開いているようなものじゃん。美味しさダダ漏れ。

ハリウッドは嫌いだが、同じネタでもずっと面白く仕上げると思うよ。

<2019.5.14記>
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