KnightsofOdessa

シベルのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

シベル(2018年製作の映画)
3.5
[音のない慟哭の衝撃] 70点

エリット・イシジャンのために行ったが、これが中々良かった。トルコの因習もの(そんなジャンルあるんか)といえば「裸足の季節」があり、そちらでも三女役を演じていた。同作及びイシジャン主演の「マイ・オンリー・サンシャイン」をATBに指定している私にとって彼女の出るトルコ映画を追うことはマストなのだ。本作品ではシベルの妹を生き生きと演じており眼福。ありがとう。

冒頭、いきなり口笛(音声)を言語(文字)に変換することをやってしまい、めちゃめちゃ不安になった。しかしこれは話せないシベルが開発した独自言語でなく土着の文化であることが提示される。シベルは話せないことで除け者にされているが、山にいる狼を狩れば内輪に入れると考えている。

ある日山小屋に兵役から逃げてきたアリという男に会う。アリもトルコの因習から逃れてきたため、シベルとはすぐに打ち解ける。彼の行動は他の唯一の男性キャラであるシベルの父(村長)と対比される。娘を一番に思っているが因習にも囚われている父と平等に接しシベルに価値観を押し付けなかったアリ。彼らの対立が最も激しくなるとき、アリは姿を消しシベルは大きな決断をする。シベルの声が出ない慟哭は鳥肌がたった。

監督二人とシベル役ダムラ・ソンメズ、アリ役エミン・ギュルソイの四名のQ&Aにも参加した。シベルの口笛は吹き替えではなくソンメズ本人のものであること、監督がアニメ好きであるということ(確かにナウシカは想起した)など。

しかし、口笛が音割れしてるのは考えものである。そこは大切にしてこうぜ(誰だよ)。
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