もちもち

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのもちもちのレビュー・感想・評価

5.0
老人の養護施設で暮らすダウン症の青年ザックは、子供の頃から憧れていたプロレスラーの養成学校に入ることを夢見て施設を脱走する。一方、兄を亡くし孤独な毎日を送る漁師のタイラーは仲間の獲物を盗んでいたことがバレてボートで逃げ出す。偶然に出会った2人に施設の看護師エレノアも加わり、奇妙な3人組の旅が始まる。それぞれ心に傷を負ったタイラーとエレノア、純粋でユニークなザック、3人が絆を深めながらまるで家族のようになっていく、心温まるロードトリップムービー。97分とコンパクトにまとまり、全体的にやんわりポップ。ただそこまで盛り上がりがあるわけでもなく、全体的にゆったり静かな雰囲気。最初はただのクズに見えたタイラーがザックと過ごすうちにどんどん良いやつになってくるし、2人が友達を超えた本当の家族のようになっていく様がとにかくほっこりする。施設職員からもウスノロと呼ばれるダウン症のザック。そんな彼を誰よりも特別扱いせずに普通に接するタイラー。特別扱いすることは優しさでもあるがほんとに当人のためになっているのかは分からない。泳げないザックと一緒に泳いで川を渡ったり、ショットガンを打ったり、酒を飲んだり。これまで守られてきたザックはタイラーに触れて、何より嬉しそう。タイラーとザックが2人でふざけ合ってるシーンやエレノアも加わって3人ではしゃいでるシーンはどれも最高。特に音楽のセンスも良く、いつまでも見てられる。友達と遊んでる時の最高な空気感を思い出させてくれる。説明しすぎないのもこの映画の良いところ。タイラーの大好きな兄を自分の居眠り運転で死に至らせてしまったトラウマや、エレノアの若くして夫と死別した過去。ザックに対してサラッと「ウスノロ」と差別する施設職員。暗い部分もあまり掘り下げ過ぎず、最後もサラッと終わっていく。ザックのプロレスシーンも思ったよりサラッと終わっちゃう。変にくどくなりすきてなくて見やすい。「友達は自分で選べる家族」。最初に施設の老人が言ったこのセリフがこの映画を最も表した言葉だと思う。ダウン症というテーマを重くなりすぎず、かつ丁寧に練られたプロットで綴る名作ロードムービー。「チョコレート・ドーナツ」に少し被るけどより見やすくてこっちの方が好き。
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