Inagaquilala

トリプル・フロンティアのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

トリプル・フロンティア(2019年製作の映画)
3.9
トリプル・フロンティアとは、ブラジルとアルゼンチンとパラグアイが国境を接している地帯。アメリカ軍の特殊部隊を退役した5人の兵士たちが、この地に住み、巨額のドルを隠し持っている麻薬王から現金を強奪するというアクションドラマだ。もともとは「ハート・ロッカー」や「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリーン・ビグロー監督が、ジョニー・デップやトム・ハンクスの主演で映画化が進行していたが、途中で、企画そのものがネットフリックスに渡り、ベン・アフレックやオスカー・アイザックで企画が実現した。プロデューサーにはキャスリーン・ビグローの名前もクレジットされている。

予想外の巨額の現金を麻薬王から強奪した5人は、その現金をネットで吊り下げて、ヘリコプターでトリプル・フロンティアからアンデス山脈を超えて、海側に脱出しようとする。しかし、奪った現金があまりに巨額だったために彼らの計画は狂い始める。もちろんアクションも観応えはあるのだが、ある意味、この巨額の現金との「格闘」がこの作品の妙味だ。

命をとるか、現金をとるか。答えはわかっていても、その二択は5人の団結に軋みも生む。この現金を奪ったあとの、彼らの葛藤がこの作品の観るべきドラマかもしれない。あまりに美しい彼らの処し方に、少々、疑問も残るが、ただの現金強奪のアクションドラマではないことは事実だ。車、ヘリコプター、ロバ、そして徒歩でのアンデス越えのシーンは、その苛酷さとは裏腹に、なかなか美しい。その風景の前には、人間の欲望など、なんと些細なものに映るのか。そういう意味で、まさにトリプル・フロンティアを描いた作品なのかもしれない。
Inagaquilala

Inagaquilala