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ブルーアワーにぶっ飛ばすのkiritoのレビュー・感想・評価

ブルーアワーにぶっ飛ばす(2019年製作の映画)
3.4
【爪】

日の出前と日の入り後に発生する空が濃い青色に染まる時間帯:ブルーアワー。
大学生の夏といえばブルーアワーと言えるくらい最強になれた一瞬の時間。社会人になった今、あの友人達と過ごしたかけがえのない時間をふと思い出したりする。

30代。結婚しはしてるけど子もおらず不倫をし、それでも自称凄腕CMディレクターとしてなんとか社会に繋がっている砂田。ある日砂田は大嫌いな故郷茨城に帰ることを決意するがそこに自由奔放な友人清浦がついてくることになる。

砂田のニューバランスは汚れている。年齢的にも仕事的にもきっと気をつかう余裕がない。社会の何かが気に入らない。人生に諦めかけているそんなキャラクター。
対して清浦は自由奔放で茨城で会う人会う人に好かれうまく溶け込んでいく。

この映画は彼女の自分探しのロードムービーであり、成長譚でもある。

大嫌いな茨城。実家の台所は汚れていて、父はよくわからない骨董品を集め、何考えてるかわからないコミュ障の兄、スナックに行けばまるで害虫のような生産性のない親父達の会話。かと言ってLINEの中の不倫の男は呑気に犬の絵文字を使ってきて腹が立つ。愛想笑いをすればスナックのままに「その笑い方クセになるよ」と釘を刺される。
大嫌いな田舎でありながらそれぞれ人は生きていて、おばあちゃんのしわくちゃの指の爪は今日も元気に伸びている。
そんなことに気づいた時、夫とのやり取りに幸せを噛みしめる。

刺さる人には刺さる映画のはず。

※夏帆もシム・ウンギョンも適役。

2020.4.6
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