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彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【永遠に色褪せない記録】

原題が良いですね。
WW1 開戦前から終戦までを、元イギリス兵達の証言と共にまとめたドキュメンタリー。

カラーじゃなかったっけ?と思ったら、戦前戦後はモノクロのままで、カラー化は戦争中の映像のみでした。

徴募対象は19〜35歳の所を、15歳以上の多くがサバを読んで志願。
戦争が何かも知らず、ある者は日々の生活に嫌気が差して、ある者は刺激を求めて友達と一緒に、ある者は臆病者のレッテルを避けたくて。ボーイスカウトの延長程度のお気楽さにびっくり。
体力のない者には辛い6週間の訓練で、後悔し始める人も出たけれど、これまた意外にもあまりスパルタのイメージではありませんでした。

いざ出陣した前線は不衛生な環境。シラミに寄生虫に赤痢に壊疽。普段の生活自体が既に非人道的で、体験談にゾワッとしました。慣れない軍靴は重く、着替えはなく、寝不足と空腹が襲う日々。増える死体がネズミも増やし太らせる。落ちたら助からないという、文字通りの底なし沼と化した一帯。

一方の後方支援は物資運搬を主とした重労働で、前線で病んだ精神を癒すにはキツかったと。

それでも不思議なのは、カメラが回る間、兵士達の多くはレンズを注視して、若々しい笑顔を絶やさないのです。暇な時は仲睦まじくスポーツやゲームに興じて時間潰し。元兵士達の数多くの証言の中で、明らかに涙を堪えていたのはひとつだけで、時折笑いながら淡々と思い出を語る口調が大半でした。予想に反して全体的に悲壮感のない雰囲気のものが多かったです。撮影自体は多少プロパガンダ的な意図もあったのでしょうか。

ただ、no man’s landを進みドイツ領域に決死で乗り込む作戦は、写真もありましたが主にスケッチと音声だけで表現されており、その惨状は想像を絶するのだろうなと思いました。ドイツの地雷の威力は凄まじいし、既に火炎放射器を使っていました。イギリスからは秘密兵器としてマークI 戦車が登場。

ドイツ兵捕虜(特にバイエルン人?)は意外にも従順で、進んで負傷者を運び、中には怯えている若者も。そんなドイツ兵に同情してイギリス兵が笑顔でジョークを飛ばせば、隣にやって来て英語で話しかけてくるドイツ兵の話もありました。イギリス人もドイツ人も、軍服を脱げば元は皆同じような一般人ばかり。互いに政治的勝敗なんて正直どうでも良いし、命令に従っただけで大して恨みもなく、早く戦争が終わって欲しいと共にうんざりしていたという説明に少し救われました。

しかし英国へ帰還後の冷遇には愕然としました。仕事もなく(断られる!)、理解もなく、兵役に感謝するどころか関心すら示さない市民。帰還者同士でしか戦争の悲惨さを理解し合えず、多くが行き場を失ったようでした。また、同情は非理解の裏返しであるという言葉が突き刺さりました。

民間人が兵士となって戦争を体験し、また元の生活に戻ろうとするまでの一連の流れを、経験者目線で知ることが出来ました。戦闘方法は変化しても、戦争の始まりから終わりまで個人が直視する現実は、今後も恐らくそう変わらないでしょう。先人達が経験したからこそ判明した戦争の不毛さ。誰も英雄視することのない貴重な記録です。観賞後ひどく疲れました。

“If you survive that, you can survive anything.”

“You don't look, you see.
You don't hear, you listen.
You taste the top of your mouth, your nose is filled with fumes and death.
The veneer of civilization has dropped away.”

“However nice and sympathetic they were, attempts of well-meaning people to sympathize reflected the fact that they didn't really understand at all.”

“Everything should be done to avoid war.
I still can't see the justification for it. It was all really rather horrible. I think history will decide, in the end, that it was not worthwhile.”
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