テロメア

バイバストのテロメアのレビュー・感想・評価

バイバスト(2018年製作の映画)
3.8
フィリピン版『ザ・レイド』とのことで観てみたら、なるほど、そんな感じでした。ビルではなくスラム街に閉じ込められる。その迷路感は現代のダンジョンっぽく、ファンタジー世界版でダンジョンに閉じ込められてひたすらモンスターとバトルするファンタジー版『ザ・レイド』とかあってもいいのになぁ、と今作とは関係のないところでそんなことを連想してました。

ただ、今作だけの問題ではないのですが、女性アクションでの問題点(女性だけではなく、小柄な俳優、筋力が明らかに足りていないアイドル系などなども同様)で、明らかに打撃力や蹴りが痛そうでないにも関わらず、やられてくれる筋骨隆々なマッチョの図はやめようや、と。

いやね、マッチョ相手でも人間だからさ、喉とか目、あるいは首に連打とか、いろいろ打撃力が敵マッチョよりなくてもダメージを与える術はあるが、それは怯むだけであって最終的には銃やナイフ、そこらに落ちている鉄パイプや角材やガラス片で止めを刺さないと、やっぱり説得力が欠けるんだよね。だから、スキンヘッドの同僚のバトルの方が見ていて安心感があった。

これは昨今のジェンダー云々ではなく、筋骨隆々の奴相手にする場合の当たり前の対策としている演出。あの動けるトニー・ジャーでも『トム・ヤン・クン!』で骨トンファーしたし、過去にも動けるけど小柄なアクション俳優はそうした演出がなされている。トニー・ジャーは離れ業の空中二回転からの遠心力キックが突き抜けた説得力があるが、普通はそんなことはできんので銃やナイフなど武器を使いましょうって話。

で、最近印象に残っている上手いことした映画は『ブラックウィドウ』。最初らへんのアクションで、ドアのガラス部分に突っ込んで落ちるというなかなかに痛そうな演出があり、そうしたリアルに想像できるダメージ演出があったからこそ、ラストバトルのぶっ飛んだシーンにも説得力が出てくる。これは『シン・ゴジラ』でも同じで、冒頭に延々と会議シーンを入れることにより、ラストのぶっ飛んだ作戦シーンに説得力が出てくる。両方ともラストバトルだけ観ると、ありえん演出の数々でリアリティ皆無になるが、地盤作りを冒頭でしているがゆえに、映画一本を通して見ると気にならず、むしろ盛り上がるようになっている。

んで、今作の場合、それがスラム街のあり様がそれに該当するのですが、問題は銃弾が早々に切れてしまうこと。銃による説得力が担保されない場合、他の武器をガンガン使わないといけないが、結構長いバトルで打撃と蹴りのシーンがあって、そこでなんか悪い意味で映画だなぁ、と過ってしまった。これは今作に限ったことではないけれど、そういう冷めてしまう映画的リアリティが足りないのはどうしてもなぁ。疲れているときに現実逃避に観ていると、余計に普段はスルーする粗が気になってしまっていかん。

まあ、そうしたアクションフリークでなければ、今作は見応えある映画だった。そもそも映画の感想って体調に左右されてしまうから、それらを是正して自分にとっても正確なスコアを求められるようにしたいところ。体調別にしたら好みな映画だったので、また時間を空けて観てみたいと思います。
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