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Fukushima 50のkazataのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
2.5
賛否両論渦巻く本作をようやく鑑賞。

まず前提として、個人的には大きな事件や事故をメジャー映画で描くことは大賛成です。「ギャレス・エドワーズ版ゴジラ(2014)で原発事故描写がされる前に日本映画界で作んなきゃ!」と思ってからだいぶ時間が経ったけども……本作が作られたことの意義は認めます。

事故後になる早で製作されたものであれば、困難な原発事故に最前線で立ち向かった人々を(過剰に)ヒーローとして描くこともいいでしょう。だけども事故から長い時間が経てば経つほど、事故前後の一連の問題点が現実社会の中で見えてきたり語られたりしてくるわけで……その時期に映画化するならば、それら過去の検証と現在進行形の諸問題を含めた批評性こそが作品には求められると思います。(それこそ原発事故は現在進行形で終息の目処すら経っていない現実があるわけで…)

そんな視点で本作を鑑賞すると……批評性の部分は圧倒的に弱いよね。再現ドラマを描くことだけに終始してしまった印象は拭えません。

(10m越え津波の想定が地震前にあったのに、それを無かったこと=対策を後回しにした事実が東電にはあるわけで…)

(首相が乗り込んできてのドタバタ劇が原因でベントが遅れた云々みたいになっていたけども、住民の避難完了が終わったのは首相が帰った後なわけで……結局それ以降じゃないとベント作業はできなかったんだよね!?)

(辛うじて「自然をなめてました…」的な台詞があるぐらいだけど、いやいや、それで済ませちゃったらアカンでしょ!またなんか起こればどうせ"想定外"とか"未曾有"とかで逃げるだけじゃん!!)

(そしてこの男だらけのシステムというか社会構造には改めて愕然としちゃうよね…)

(高線量被曝の悲惨さは台詞だけじゃなくて、放射能の怖さを描くためにもちゃんと映像で見せといた方が良かったんじゃないかな…)

そしてなんと言っても最後の"復興オリンピック"の件が……
オリンピック延期決定が確実になった今見ると、このシュール過ぎるまとめ方が皮肉になっていて"逆に良き!"って思えるというね(失笑)

原発事故を無理矢理終わらせ過去のものにしたいんだろうけど、なんか結果的に"オリンピックが今年開かれないこと=原発事故はまだ終わってないぜ!"ってメッセージが重なっているように見えてきて、、、ある意味で奇跡的なラストになってる気がします(苦笑)
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