さといも

ホテル・ムンバイのさといものネタバレレビュー・内容・結末

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

史実に基づいている話。
見ることができてよかった。

2008年に起きたムンバイ同時多発テロのタージマハルホテルを舞台にししている。突如、ムンバイでも屈指の高級ホテルにテロリストたちが銃を乱射し宿泊客、スタッフを虐殺し始めた。
難を逃れた宿泊客やスタッフも部屋をひとつひとつ調べ上げて虐殺していく。そんな中、ホテルマンとしての使命を果たすため自分たちだけなら逃げられるが、あえて宿泊客を助けるために奔走したスタッフたちを描いた物語。

ほんの16年前に起こった史実というのが大変つらい。「なぜ、警察がこない?」「まだ子供だろう」気づくと作中の人物と同じ言葉を紡いでいた。
決死の覚悟で突入する警察官、恐怖に震えながら赤ん坊を保護するベビーシッター、必死に宿泊客を守るコック長。
すべてが印象的だったが、とりわけ印象的だったのがテロリストたちだった。彼らはまだ子供で細かい指示はすべて携帯で指示されていた。女性の身体に触れる、同じイスラム教徒を殺す。教えに反することでも「神のため」のひとことで拒否することはできない。その姿が闇バイトの少年たちと重ねてしまい、人間の行動があまりにも簡単に制御されているように感じてしまった。
彼らのやったことは許されることではない、それでもあまりにも本人の気概とやっていることに差がありすぎる。おまけに指示役からの「家族への補償」もどうやら受けていないらしい。
あと、印象的だったのは受付のスタッフだった。テロリストが虐殺する中、彼女たちは息をひそめながらも命がけで宿泊客に「決して扉をあけるな」と連絡していた。けれど次のシーン、そんな彼女たちがテロリストに脅され「警察が来たので扉をあけて」と宿泊客の虐殺に加担させられ、拒否したり役目が済んだら殺されてしまう。あまりにも人間の意志のようなものが簡単にないもにされてしまいやるせなかった。

すべてのシーンが衝撃的で言葉を失ってしまう連続だった。物語の終わりも「やっと終わった」という疲労しかない。これが現実なのだからやるせない。なによりこれだけのことがあったにもかかわらず「そういえばあったな」程度しか認識していなかった自分がいた。結局人は興味のあること以外にはあまりにも無関心なのだろう。
身勝手な言葉だが平和であってほしいと思った。

とても衝撃が強いけど観ておいてよかった。そんな映画でした。
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