チリ南部のある集落から脱走したマリアは森の中の一軒家で2匹の子ブタと出会う。子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をするマリア。やがて森の奥からマリアを探すオオカミの声が聞こえはじめる。
これはヤバい。ホントに悪夢としか言いようがない禍々しさに満ちている。アリ・アスターの推しも納得。全編ワンカット、人形やドローイングさらに家の内部そのものが生きているかのように絶えず変化し続ける…。いったいどうやって作ったのか、今までに見たことのないストップモーション・アニメ。ひとつのアート作品というのもしっくりくる。
ビジュアルの強烈なインパクトの一方で、残酷なおとぎ話が何を物語るものなのか、一見してもわからない。しかし、着想元であるという実在のコミューン“コロニア・ディグニダ”に関する事実を紐解くと、背景にある歴史や社会の暗部にハッとさせられる。同時上映、短編『骨』。