瀬口航平

ジョジョ・ラビットの瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

新年一発目はこれです。とてもとてもよかった。

スカーレット・ヨハンソン良い。主演の子すごく上手い。。こういう作品をこの年でやれるのはすごい。多数派の価値観が必ずしも善ではなく、不変の絶対的価値観ではないことを思った。

母の死のとこがパッと見ん?と思ったけど、あれは多分ゲシュタポにキャプテンKが告発したのではなくて、(もしそうなら誕生日間違えた時点で告発するはず)母は密かに反ナチ運動を行っていて、それがバレたのかもしれない。その疑いがあったからの家宅捜索?
でもジョジョは敬虔なナチだったから何もされなかった、あのタイミングでキャプテンKが来たのは、ゲシュタポの動きを嗅ぎつけて助けに来たのかも。
もしユダヤ人を家にかくまってたのが原因で母が殺されたのなら、ユダヤ人の彼女は無事では済んでなかったはず。

最後、ナチが負けたはずなのに、外は危険だ、ドイツが勝ったと嘘をついてまで彼女にそばにいてほしかった、彼女のことが好きだったとこよい。

また、家宅捜索によって、彼女が捕まらないかドキドキしたり、ネイサンをメタメタにひどいことする絵本を描いたことへの罪悪感だったりで自分の中にある本当の気持ちに気づくとこもよい。

ヨーキーはどこか本質を突いていたり、客観的視点があるけど、それでもロシア人やイギリス人に関しての偏見がまだ拭えていなかったりするところがあったりして、これからいろいろなことを知っていくんだろうな、こんなにもあっさりと、自分たちは間違っていたとはっきり言える彼なら、きっとすぐに誰かを排除するような考えを改めることが可能だろうと希望が持てた。
ただ、ヨーキーが言うように、他国の軍人のドイツ人に対する態度がほんとうにひどく、そりゃそんなふうにも見えてしまうわな、とも思った。
ドイツはドイツで他国の人間を虐げて、他国は他国でドイツ人を虐げる。こんなんじゃいつまでも変わらん。。

母の、愛は最強、との言葉もよい。
ジョジョは、そんな目に見えないもの強くない、と言うけど、目に見えないものだからこそ最強なんだと思う。良くも悪くも。ある意味ヒトラーの最も怖いところはこの目に見えない、認知の難しい無意識下の洗脳の部分だとおもうから。

ただ、ヒトラーは今の時代では誰もが悪だと認めてる。愛の勝利ですね。
客観的に見れば、明らかに間違ったことに対して渦中にいる人間はなかなか気づけない。多数派の価値観が果たして本当に正しいのか、何かを見失っていないか、たとえ自分の思い描く理想の世界が理想でしかない、そんなもの実現不可能だと言われたとしても、諦めちゃいけない、この世の中、世界はそういう人たちの思いや行動を通して、時代を超えて、少しずつ良くなっていってる。平和を希求する人たちの闘いや勇気ある行動を今の自分たちが無下にせず、最後のジョジョのように、「できることを行う」こと。それがもしできずにいる人たちがいたとしても、そういう人たちへの共感や慈悲の思いを忘れずに。人間の本性が残虐性ではなく、愛に基づいたものであることを信じて。
今はとても複雑な時代だから第二のヒトラーが現れても気づけないかもしれない。最近読んだ本に、人間にはデフォルトで人を信用してしまう性質がある、と書かれていた。それは美徳でもあるし、愚かさでもあると。人は信じたい、けれども人間の愚かさも時には忘れずにいることを肝に銘じて生きていこう。

新年一発目の映画がこれで良かったです。皆さんの心が平穏で、世界が平和であることを心から祈ります。ハッピーニューイヤー!
瀬口航平

瀬口航平