都部

スウィング・キッズの都部のレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.1
音楽は国境を超えるというたびたび繰り返されるジャンル映画としての力強い命題を踏まえた上で、それでもそれを良しとしない思想による対立が引き起こした戦争の酷薄さを伴わせることで、韓国映画特有の差異のある しかし一体となった二面性を維持しながら味わい深い映画としての形作られている物語は見事だ。

寄せ集めの人間達が徐々に結束を固めてタップダンスの実力を高めていく前半の雰囲気も好きだが、思想による対立の中でそれでもただ踊りたいと願わずにはいられない人間の儚い煌めきを描く後半は大変好ましい。タップダンスが織り成す軽快な足音の響きもまるでちがって聞こえてくるし、使命的な事柄から切り離されたその姿が束の間の自由として際立つ構図となり、イデオロギーに中指を立てる物語として最後に結実する。ただそれだけでは終われない物語だからこそのラストシーンの感動という部分もあり、感無量の鑑賞体験となるのは自明である。

ミュージカル映画としての演出の決まり方も濃密で、抜かりのない物語に置いてけぼりにならない強固さがあるからこそ、ジェットコースター的な物語がキチンと整理された形で成立しているんだろうなぁと。
都部

都部