のこりん

スウィング・キッズののこりんのネタバレレビュー・内容・結末

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

前半で思いっきり油断させてきて心を解放させておいて、後半ですっかり剥き出しになった感情にたたみかけてくる緊張感と哀しみ。観終わってから感情を整えるのに苦労した。

ギスとパンネの関係性、二人の魂が呼応するようなモダンラブの躍動感溢れまくりのダンスシーン、雨の中をギスの目を介してジョンサムとシャオパンのやりとりを見せられるシーンとか、忘れがたい名シーンがたくさん。雪が降ってる間の流れもよかったな。事が起きるクリスマスの前のほんのひとときの静かな時間。

あとギスが寝てる時にパチっと目が開いて周りのいびきや歯軋りがタップの音にきこえちゃうところとこも可愛かったな、その後でそれが悲しい出来事につながっていくけど。ギスの隠せないタップへの情熱が時には微笑ましく時には辛いものに変わる振り幅。物事の表と裏。
常に淡々とした表情のジャクソンが、クリスマスのステージで強い意思と共に見せた瞳、そしてステージ上でギスが撃たれた時の溢れる涙と真っ赤な瞳。

ギョンス、ステージのソロ、素晴らしいダンスだった。タップダンスをすることが生きることに繋がってしまったギスの喜びと哀しみが溢れていた。思い出すと泣けるなあ。完全にギスだった。

複数の言語で会話する彼らが、言語の違いを超えてどこまでお互いの言葉を理解しあえたのかを想像するのも面白い。そして普段英語を話さないギスがジャクソンに英語で言った、I want just dance.の強さとか、言語の使い方がとてもいいなと思った。

すみずみまで素晴らしく、捕虜の人々の普段の暮らしぶりや、バンドメンバーのやる気ある時ない時が演奏の待ち時間にまで見え隠れしてたり、細部にまで個々のキャラクターのエッセンスがしっかりと込められていた。

衣装もすごく良かったな。
モダンラブのときのパンネの踊ってるときの解けたボウタイとか。キラキラしていた。ジャクソン来てからちゃんと着替えてるんだよね。パンネらしさが伝わる。

気持ちを残しておこうと思うときりがなくなるほど、この映画が好き。
青春映画でもあり、コメディでもあり、ダンス映画でもあり、戦争映画でもある。
満点でないのは、やっぱりあまりにも辛すぎるから。単純に争いは嫌だと強く思わせてくれた。

何度でも彼らに会いたいから上映が続く限り追いかけて行こうと思う。

シネマ神戸、Amazon
のこりん

のこりん