Jun潤

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのJun潤のレビュー・感想・評価

3.8
2022.05.04

ついにマルチバースの扉が開くー。
これまでのMCU作品群の中では噂程度にファンの間で囁かれていた程度だったものが、『エンドゲーム』から徐々にその片鱗を見せ始め、MCU前作の『スパイダーマン NWH』でついに実現、Disney+で展開中のドラマの方で下地作りができたところで本格的に映画作品にマルチバースのビッグウェーブが。
乗るしかない、この大波に。
個人的にシリーズ一作目の映像がめちゃめちゃ好きだったのでその2作目としても期待は最高潮でした。
全世界最速公開の封切り日がGWど真ん中の水曜サービスデーという座席戦争を乗り越え、今回IMAX3Dにて鑑賞。

監督はトビー・マグワイア版『スパイダーマン』のサム・ライミ。
しかし今作にはマーベルの世界に「帰ってきた」というよりも、『死霊のはらわた』が象徴的なホラー映画界の巨匠として、MCU作品群に満を辞して降臨。
マルチバースと共に、新たな風をMCUに吹かせる。

違う世界の自分が少女と共に怪物から逃げているー。
そんな夢から目覚めたドクター・ストレンジことスティーブン。
彼は元恋人のクリスティーンの結婚式に参加していた。
そんな時、謎の怪物が街を襲う。
ストレンジはヒーローとしてウォンと共に立ち向かい、苦戦しながらも斃すことに成功。
その怪物が狙っていたのは、ストレンジの夢に出てきた少女アメリカ・チャベスだった。
彼女は宇宙から別宇宙へと移動できる能力を持っており、何者かが差し向けた怪物から逃げていたため、カマー・タージで保護することとなる。
ストレンジは多次元宇宙・マルチバースについて、スパイダーマンとの関わりで存在を認知していたが詳細が分からず、ウェストビューでの事件を知っていたためワンダの元を訪れる。
そこで目にしたのは、ワンダこそがアメリカの能力を狙い、禁断の魔術ダーク・ホールドを用いて別宇宙のストレンジとアメリカを襲った黒幕であるという事実だった。
アメリカを狙いカマー・タージを襲撃する、スカーレット・ウィッチと化したワンダ、それを迎え撃つマスターズ・オブ・ミスティック・アーツの面々。
しかしウィッチの強大な力には及ばず大ピンチに陥る。
その瞬間、アメリカの能力が発動し、ストレンジとアメリカは多次元宇宙を巡る壮大な冒険に出ることとなる。

いやはや、やってくれたなMCUゥ!!
これは予想できない、予想以上だけど正直やりすぎ。
あと「マルチバース・オブ・マッドネス」というより「スカーレット・ウィッチ・オブ・マッドネス」。

順を追っていくと、まず物語としては、『ワンダヴィジョン』の正当な完結編だったり、MCU外の意外すぎるゲストキャラから成る新たなアベンジャーズも描かれ、今後の展開を予感させる言うなれば『エクストラ・アベンジャーズ』な作品だったりしましたが、根底には禁断の魔術があったり、マルチバースを巡る中でストレンジが世界を、大切な人を救うことの本当の意味を知るヒーローとしてのライジングや、元恋人のクリスティーンに対する心残りを払拭したりと、純粋に『ドクター・ストレンジ』の2作品目として仕上がっていたと思います。
しかしとはいえMCUの映画作品だけでなくドラマの内容、その他もろもろの単語やキャラクターについては事前の予習がないとわからないし、今作で続出した『エターナルズ』並みの難解単語には明確な説明がなかったりと、映像とアクションでノリノリな作品に仕上がっていたものの少し思考がストップすることもしばしば。

次にヒーロー作品として観ると、今作のヴィランはスカーレット・ウィッチで、これまでの作品でヒーローとしての姿を見ていたからこそ、いわゆる闇堕ちしてしまうのは心が痛かったですし、そんなウィッチに対してストレンジたちが全く歯が立たなかったり、上述の「エクストラ・アベンジャーズ」も活躍こそしていても敵わない姿を観ると、もはやサノスよりも絶望感が大きかったです。
それに加えてキャラ付けバッチリだし、『ワンダヴィジョン』で表出した彼女の闇を見ていると、そりゃそうなるわってなりますわ。
その根底にあるのが母の無償の愛というのがまたいやらしい、感動ポイントにも強さの証明にもなりますよ。
そう思うと結末もなんだかビターでしたね。
そしてストレンジもまた魔術師らしく、今作の要素を回収しつつ応戦する様もあってカタルシスが発揮されましたが、それもそれで跳ね除けられてしまうという…。

上述の通りの激強ウィッチに加え、アメリカの能力の目覚め、別宇宙のクリスティーンの活躍、「エクストラ・アベンジャーズ」の女性メンバーなど、妙にポリコレ色の強さは感じました。
男の子なもんでカッコ良くて強い“ヒーロー”が見たいんですよね、“ヒロイン”もいいですが。

さて、こちらも上述の通り監督がホラー界の巨匠としてのサム・ライミ。
これまでの作品では見られなかった演出が多数ありました。
特に迫ってくるウィッチだったり、造詣がグロテスクでホラーテイスト強めなCG、ゴア描写強めなアクションとゾンビ・ストレンジと、ホラー映画だっけ?と錯覚するレベルでした。

『ブラック・ウィドウ』から始まったフェーズ4も気付けば5作品目。
改めて振り返ると匂わせ程度だったフェーズ1、スターシステムのようなフェーズ2、過去作鑑賞が必須なフェーズ3ときて、フェーズ4はよりコアなファン向けになってきている印象を受けます。
作品の完成度に比例して鑑賞のハードルが高くなるというのは、嬉しいような悲しいような。
ついていくのもやっとですがそれに対するリターンも半端じゃないのでまだまだついていく所存です。

今回はIMAX3Dにて鑑賞。
『ゴジラvsコング』以来でMCUとなると初なのですが、まぁー技術の進歩が素晴らしい!
ちょっと画面より飛び出るなんてものではなく、やはり奥行きを感じられるのがとても強い。
あとはもう撮影手法から違うのか、キャラクターの位置関係が左右だけでなく遠近もくっきり分かれていたように観えました。
ちょうど所用で初めて舞台を観劇したこともあって、舞台上の奥行きを使っていたことに感銘を受けましたが、まさか早速映画作品でも観ることになろうとは…。

そして今作だけでなくおそらく今後の展開に大きく関わってくるであろうマルチバースについて。
今までは単にマーベル・スタジオが権利を保有していないヒーローやヴィランをMCUに登場させられるようになるだけなのかと思っていましたが、どうやら宇宙によって設定や世界観も大きく異なる模様。
これはもしかすると登場済のヒーローの新作でも従来の舞台だけなく全く新しい世界観の作品も作られる可能性があると思うと、期待で胸がパンパンですね。

ストレンジとウィッチ、マルチバースを使って今作で伝わってきたメッセージは、「自己愛」と「他者への愛」なのかなと思いました。
マルチバースという設定から世界観までまるで違う宇宙だけど、それぞれにいる自分と愛する人。
周りになんと言われようと、別の宇宙の自分がたとえどんな人間だろうと、全員同じ自分自身、せめて自分だけは自分の味方であり続ける、愛する人も、別の宇宙でどんな人間だろうとどんな結末が待っていようと、必ず愛すと言えるほどの強い感情が伝わってきました。
Jun潤

Jun潤