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クロースのエスのレビュー・感想・評価

クロース(2019年製作の映画)
4.5
お願いだから全人類観てくれという気持ち。

正直、こんな良い作品だとは思ってなかったし、ただ''クリスマス''を欲してただけだった。けど見終わった今、どうにも涙が止まらん。

この作品は去年からずっと気になってたやつ。Clip!欄の奥底に眠ってました。でも、その詳細はあまり知らず、みんな大好きサンタさんのカラフルでハッピーなアニメーション作品くらいに思ってたんですよね。

しかし、これはそんなただのクリスマスの雰囲気に頼りきったものじゃなく、(そういうのも大好きなことは大前提として)より人間味に溢れたダークな部分もガッツリ描かれている。善と悪の存在意義。そして、部族間抗争や、子供たちの教育環境が整っていない地域への問題提起でもありました。

でも、どの年齢でも楽しめるように難しすぎないのが良い。
シンプルだけど胸に直接ズドンとくるものがそこにはあって、現状に感謝することをいつの間にか忘れていた自分に気付かされました。

''当たり前''なんてものはなかったね。

物語としては、サンタクロースの誕生秘話を全く新しい解釈で描いたもので、主人公は苦労知らずのおぼっちゃま、ジェスパー。郵便配達局長の父親に遂に見限られてしまい、遠くへと島流しに。行き着いた先は、''スミレンズブルク''という寒く薄暗く気味悪い町。そこに暮らすのは争いの耐えない住民たち。飛び交う罵声に皮肉混じり会話。そんな世紀末みたいな場所で郵便配達を任されるというはじまり。

そして、肝心のクロースは不気味な山小屋に住み、無機質でまるで殺人鬼のような風貌での登場。びっくり。

このめちゃくちゃな状態から、どう''クリスマス''を描いていくのかと、半ば心配しながら見進めてたけど、結末はしっかり、心がじんわりと温かくなるのをちゃんと感じられる素敵すぎる作品でした。今なら暖房いらない気がする。ぜひ観て。

初めてプレゼントのおもちゃを受け取った小さな男の子の表情……嬉しいよねぇ……求めていたのはこれです……その後も子供達の無邪気な笑顔がとにかく尊くて、自然と泣けちゃった。もう自分は大きくなっちゃったけど、やっぱおもちゃって偉大だったなぁ〜って。

登場人物みんな魅力的で大好きだけど、個人的にはマルグがお気に入りでした。かんわいい。サーミ語ははじめてだったので、全然何言ってるかは分からなかったんだけど、ジェスパーを呼んでるのだけ分かったときは鳥肌が止まらなかった。その後のハグも……もう言葉が出ん……

''本当に欲のない行いは、人の心を動かす。''


何度もいうけど、この時期だからこそ是非観て欲しいし、自分も多分またすぐ観ます。
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