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アスのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

アス(2019年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

前半は良質のホラー、後半は冗長なB級映画。そういえばゲット・アウトもそんな感じだったもんなぁ。

とにかく前半の恐怖演出は素晴らしい。じわじわと恐怖を煽っていき、いざ「彼ら」が登場したときの怖さと言ったら無い。あの玄関先のカット、シルエットだけなのに夢に出そうなレベルで怖い。そうして実際に対峙するが、いつまでも得体が知れなくてやっぱり物凄く怖い。コミュニケーションがとれそうでとれないくらいが一番怖いわ。一家がボートで逃げ出すところまでがこの映画のハイライト。

後半、別家族のコピーが登場してしまうと一気に怖さが半減。さらにニュースでも報じられるレベルで各地に出没しているとなるといよいよ全く怖くない。そして終盤、細かいことが一気に説明台詞で明かされる。いや確かに説明中の構図は凝っていて怖めだったけども、もう少し上手いこと台詞無しでどうにかできなかったのか。地下に広がる空間に自分の空っぽのコピーがただただ動きを真似て暮らしているというアイディアは面白いが、「そういう実験をしていた悪の組織(政府?)」の存在を匂わせた途端に話が陳腐に見えてしまう。オカルトにせず理屈をつけたかったのであろうことは想像できるが、この場合はオカルトのほうが怖かったような気もするし、理屈にした途端細かいツッコミどころが気になってしまう。

コピーたちの目的は「入れ替わること」ではなく「自分たちの存在をアピールするためのキャンペーンを張る」ことのようで、本当にその目的ならばコピー元をわざわざ殺す必要がない。結局僻みから来る感情的な理由で殺していたようにしか感じられず、この辺りも興ざめポイント。長い間コピー行動しか取れなかったのに、急に自由に動き出せたのもわかりにくかった。行動を操るために作られて地下に放置されていたコピーの割には身体能力が高すぎるし。大体閉じ込められていたわけでもないのだから、「ウサギ肉しか食べられない」とか言って勝手に恨んでないで、普通に脱出して牛肉でも何でもお召し上がりになれば宜しかろう。

ラストの大オチに至っては、「もしこうだったらつまらない」と思っていた通りの展開だったので、非常に残念だった。であればもう少し伏線を張るなり上手く活かすなり出来たと思うんだけどなぁ。

主演女優さんは顔芸を頑張ってたね。表情が迫力満点なので、彼女が物語の説得力を一人で担っていた印象。荷が重すぎるわ。あと真っ暗なシーンが多く、黒人一家のせっかくの頑張りが非常に見づらかったのが残念。もう少し照明とか、見せ方を工夫してほしかったな。

宗教とかアメリカとかに絡んだメタファーも色々と挿入されていたのかもしれないが、そこまで興味を持てなかった。監督が「特権階級への闘い」がどうたらとか語っているようだが、悪いけどこの映画だと逆恨みにしか見えないよ。
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