Koshii

アスのKoshiiのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.7
ホラー映画を観よう!第二回!

今回もまた、ブラムハウスからのチョイス! インパクトのあるジャケット。〈私たち〉が襲ってくるという、気になる謳い文句も相まって俄然興味をそそられました!(こっそりR15にレベルが上がってます)

以下、ネタバレや考察を含みます。












社会問題×ホラー×コメディ

これまで、ブラムハウスの作品は『ハッピーデスデイ』、『ザ・ハント』、『ゲットアウト』と観てきたわけなのだが、どの作品も上記の掛け算の妙によって、個性的で面白い作品へ昇華している。

弛緩作用のある随所のブラックコメディは、監督のインタビュー通り、次なる恐怖に備えとしてしっかり機能している。

ただ、そのユーモアもただ笑っていられるような軽いものではない。意味を多分にもたせ、お社会派映画であることをホラーとホラーの隙間で突きつけるのである。


さて、本作『Us』は自分達と同じ姿をしたドッペルゲンガーが突然現れ、恐怖の一夜へと変貌していく様子を描いている。マイケル・ジャクソンのスリラーの歌詞をなぞり、暴力的な恐怖と底知れぬ怪しさが支配し始める。

表の世界で光を浴びて過ごす我々(us)と、心を持つことが出来ずに地下に押し込められたテザード達。テザード達の中に、光を求める少女が存在した。彼女は偶然と偶然が重なるその時を待っていた、、、


ここからは、私的な考察であることをご理解頂きたい。

最後のどんでん返しについて、沢山の方が考察されており、どれも興味深い。
小ネタの一つ一つの考察はその方々にお任せすることにして、私が唯一引っかかった点にフォーカスを当ててみることにする。

それは、アデレートが幼い頃に、鏡の迷宮でレッドと入れ替わったシーン。レッドは、アデレートを鎖で繋ぎ、彼女の服を拝借して地上へ上がる。

単に地上への憧れがあったというだけなら、服を着替える必要があったのだろうか。すり替わって地上での生活に馴染むという計画が元よりあったと考えるのが自然である。

となると、レッドにはある程度の理性と知能が備わっていたはずだ。

それでは何故、その時彼女は他のテザードを連れて行かなかったのか。人間らしさの残るレッドなら、酷い生活を強いられていたことによる復讐心はすでに育まれていたはずである。

つまり、地上の人間をすでに憎んでいたレッドは、偶然が産んだ好機を敢えて見逃し、もっと大規模な復讐を遂行するための計画を優先したのである。

アデレートとレッドの心は他のテザード達と比べてそこまで乖離しておらず、理性、知能ともに二者の間で共有できていたのでは無いだろうか。だからこそ、地上と地下の生活を入れ替えて体験することで、両方の面から物事を捉え、その憎悪を振幅させた。


元より心が繋がっていた神のような存在。
それがアデレートとレッドであった。彼女たちは、この階級差別を見て見ぬふりをするべきで無いという結論に達した。

一方の面からの事実だけでは、正しい制裁を下す事はできない。地上と地下を行き来した存在のみが、その権利を得るのだ。


本作からは、「不当な扱いを受けた存在だからこそ、平等に裁くべきだ」というメッセージを受け取った。
Koshii

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