しゅんまつもと

アスのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
4.5
やられた〜〜。めちゃくちゃ期待して観に行ったけど完全にその期待に応えてつつ、思いもよらないところに着地させられて茫然&口あんぐりでした。

プロローグの文章と檻に入った無数のウサギが出た時点でカラクリ自体は予想できてしまう訳で、オチへ向けたどんでん返しだけを楽しみに行ってしまうとそれはちょっともったいない。まあ最後の最後のオチで一気に世界が反転するのはむちゃくちゃ上手いし驚かされるんだけど。

前作「ゲットアウト」で黒と白を向かい合わせたのだとしたら、今回は同じ色の中でのグラデーションにまでジョーダンピールは踏み込んでいく。
1986年のアメリカがやろうとしたこと、そしてその結末に起きることは果たして映画の中のフィクションだろうか。

例えば、わたしたちの住む日本でも「東京オリンピック」という、然も国が一丸となりそうなわかりやすい張りぼての裏で、別の何か醜いものは産まれてはいないだろうか。その張りぼてが役目を終えたとき、もしくは意味を無くしたとき、産み落としてしまった影の始末は?それを隠せる場所って?そう考えると、よりゾッとしません?

襲い来るのが自分である限り、自分自信を超えなければそれを倒すことはできない。冒頭で手際よく家族4人がそれぞれ自分に抱える問題が提示され、⦅Us⦆との対決のなかでやはりそれに向き合わざるを得ないのだけど、決着のつけ方が決して根性論じゃないのがめちゃくちゃクレバー。なに真面目に勝負してんの?と言わんばかりに。

そしてラスト。あの車の向かう先が果たしてどんな場所なのか。そんなことを考えるだけでワクワクするし怖くもなれる。これが映画の面白いとこだよね。