イチロヲ

家族ゲームのイチロヲのレビュー・感想・評価

家族ゲーム(1983年製作の映画)
4.0
高校受験を控えている学生(宮川一朗太)が、ファンキーな家庭教師(松田優作)との交流を通しながら、周囲の人間たちを掻き回していく。情緒不安定な子供をもつ家庭の日常を描いている、風刺コメディ。本間洋平の同名小説を映像化している。

ATGと日活の共同製作だが、全体的にATGの臭いが強い。劇伴を使用せずに、生活音、咀嚼音を強調させることにより、家族(同居人)が一緒にいる感覚を強烈に伝えてくる。家族が横並びの食事シーンもまた然りだが、さすがにスキヤキは食べづらいだろう。

登場人物の性格付けが細部まで行き届いており、珍妙なレトリックの節回しが次々と登場する。家庭教師の得体の知れない人間性を介して、「未成熟で不完全な親子関係こそ、現代の家族の本質である」を説いていくところも巧い。

端役では、同級生の少女の母親役に初期ポルノ映画を支えた功労者・白川和子、近所に引越してくる若妻役にソロデビュー以前の戸川純が出演。この二人は芝居ではなく、ほとんど素の状態にしか見えない。
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