ピュンピュン丸

花の中の娘たちのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

花の中の娘たち(1953年製作の映画)
4.1
東宝初のカラー作品。総天然色というのかなぁ。この言い方自体がとても好きだ。映画は時代を映す鏡という意味で、自分の評価は高い。

まず、主人公の妹(岡田茉莉子)さんのメイク。まるで、当時のファッション雑誌の絵で描いた表紙のようで印象的。

戦後、マッカーサーがやってきて、日本の軍国主義の元凶といえる『家制度』を制度的に撤廃させたんだが、そうは言っても、もともと日本社会に深く根付いたものだけに、その呪縛から逃れられてないさまがリアルに描かれている。

映画のなかでは、新しい価値観と旧い価値観に揺さぶられる登場人物たちの様子が手に取るようにわかる。主人公である娘(杉葉子)の家は東京と川一つで隔てられた神奈川の農家。そして、ストーリーが終わる頃には東京とつなぐ橋が出来上がる。

農家の姉妹の、東京や、それに象徴される新しい価値観に憧れる様子が痛々しい。というか、現代からみるとむしろ理解不能な無知のようにみえるが、現代でもむやみにグローバリズムに迎合する知識人の姿とか、SNSに翻弄される若者の姿ととかを考えると、決して笑えるものではない。

旧い価値観、伝統的な日本の若者の代表としての幼なじみの農家の青年を小林桂樹が好演。とてもいい。ピッタリのキャスティングだろう。その対局に小泉博。この青年の考え方は今から見ると、至極普通で共感できる。杉葉子演じる娘の心はこの両名と「家」の考え方のなかで揺れ動く。

妹(岡田茉莉子)は東京から下宿に来た学生(平田昭彦)に恋心を抱く。

東野英治郎の演技はいつ見ても同じで、いい意味で笑えるなぁ。