ノラネコの呑んで観るシネマ

ある町の高い煙突のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ある町の高い煙突(2019年製作の映画)
2.8
近代日本の黎明期、鉱山の銅の精製の際に必ず出る煙害を、国家の発展のための必要悪として切り捨てず、巨大な煙突の建設によって解決した、先人たちの実話ベースの物語。
このNHK的に真面目なモチーフは非常に興味深いが、残念ながら映画としては退屈だ。
生産効率を上げたい会社側と、煙害被害者である地元農民。
この話のユニークさは、利害関係の異なる両者が時にぶつかり合いながらも、二人三脚でウィンウィンのソリューションを導き出したこと。
ところが、映画は肝心のこのプロセスを殆ど描かないんだな。
映画の大半は農民同士のいがみ合いだったり、農民のリーダーと会社の管理職のゆるい友情の描写に終始する。
もちろんそこも重要なのは分かるが、ナゼ一番面白くなりそうもない部分をメインにするのか。
取って付けた様な、難病物の悲恋劇の要素も中途半端過ぎる。
原作ものなので、脚色に制約があったのかも知れないが、最終的に何を描きたい映画なのかがボケてしまった。
これならわざわざ劇映画化せず、それこそNHKのドキュメンタリーとかにした方が広がりを持てそう。