きゅうげん

ロード・オブ・カオスのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・カオス(2018年製作の映画)
3.7
初期ブラックメタル・シーンを加速、いや暴走させて狂気的な破滅をもたらした歴史的事件を、バイオレントにグロテスクに再構築するヨナス・アカーランド渾身の怪作。

この「仲間内にガチモンが加入したためのカオス」感、青春あるあるですね(さすがにここまでのレベルはないですが)。学生サークル崩壊の原因ナンバーワンではないでしょうか。
ハッタリをかましてしまうユーロニモスと、歪んだ情熱をほとばしらせてしまうヴァーグや、死に魅せられてしまったデッドなど……。プロフェッショナルなカリスマがいるわけではないけれど、中心が空虚であるがゆえに上滑りした歯車が潰走してゆく感じが、いたたまれないですね……。
とくにカルキン家末弟のロリーが演じるユーロニモスの、どうしようもない虚言癖や当事者性の希薄さ、でも客観的にドン引いてるのが分かる等身大なキャラクターには、共感できる人が多いのでは。
ところで事件の当夜かけていたレコードは、『ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦』のサントラでしょうか。

それにしても、スカイ・フェレイラ!
『グリーン・インフェルノ』でも眩しかったですが、本作でもカッコイイしカワイイ。
それとブラックメタルを支えた北欧の悪魔崇拝って、欧米とは一味違いますね。ペイガニズムもキリスト教もその歴史的性格からして独特で、木造建築の不思議な教会も魅力的。