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エクストリーム・ジョブのcorsbyのネタバレレビュー・内容・結末

エクストリーム・ジョブ(2018年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

走る、揚げる、殴る、揚げる!

旅行先の映画館で偶然予告を見て気になっていた本作。
本国韓国からはかなり遅れての公開だが、お正月映画としてふさわしい盛り上がりをみせる一本。
話の展開も、ストーリー上麻薬密売組織などは出てくるが、難しいところはほとんど無く、覚えておくべき設定もそれほどない。(というか随所に出てくるステゴロシーンを見ていると忘れる)
ただ、韓国の人名に馴染みがないので顔と名前が中々一致せず、少し苦労した。

しかし、登場人物は全員とても魅力的で、5人の役割分担がしっかりしている。最初は名前も覚えられなかった登場人物を、気がつけば全力で応援していたり、一挙一動にはらはらしていたりする。
何より、彼らの役割分担が本業で発揮されるよりも前に唐揚げ店で発揮される所が面白い。
出来損ないと言われているからこそのチームの絆の演出も良い。家族関係は主にコ班長に焦点を当てながら、他のチームメイトもそれを見守るだけでなく、チャンとマの急展開する関係や、ヨンホとジェフンの飼い主と飼い犬のような関係など、人間関係にも目が離せない魅力がある。彼らのやり取りや、ともすればビビりや間抜けに見える、(本人たちはいたって真剣な)行動がいちいち面白く、本作を立派なコメディに仕上げている。慌てて物を片付けたり、揃って外を覗くスタンダードな笑いどころから、店で働くのは大変だと主張を述べる場面ではシリアスな笑いまで、うまく入っている。
笑いどころという点では、物語冒頭にしっかりと『面白い』シーンが入っているので、「この映画は笑っていいんだ」と力を抜いて見ることができる。これはその後のコメディーシーンに強く生きていると思う。
後にオチとの関連に少し意見を述べているが、このコメディータッチなやり取りがマ刑事から始まるオチの『どんでん返し』に大きく買っていることも事実。
(個人的には日本をネタにした「いらっしゃいませー!」が好き)

ライバル刑事も出番として出しすぎないレベルだが、整った顔立ちと振る舞いで十分に“出来る刑事”感を出している。2チーム合同で焼肉を食べている時の雑多な雰囲気が、なんともクセになる良さ。

食べ物を美味しそうに描くこともさることながら、アクションシーンも見応えがある。
大勢での乱闘シーンはそこまでいるか?(同じような乱闘のようなシーンが3〜4度あった) と少し思わされるが、ラストのチームそれぞれの特性を活かした戦闘が良い。

しかしジェフンの特性がどこか麻薬に傾いているところが少し残念。それ以外のメンバーが各々のポテンシャルで戦っているからこそ、不自然さがあった。
恐らく文化的だが理解できなかったのが同じく最終決戦でのジェフンの『野球部』。韓国での運動部は相当スパルタなのか、それとも日本感覚で「この流れで野球部?」と笑っていい所だったのか……。
また、結局は「みんな戦うとめちゃくちゃ強かったんです!」というオチではあるが、そこまでの不安感がすごい。前半でできない刑事だということをしっかり見せているので、中盤の『唐揚げ屋を取るか捜査を取るか』といった見せ場の場面でも、「いや、ここで捜査を取っても君たちダメダメなんでしょ?」と思ってしまう。


帰りに唐揚げを買いたくなること間違いなしの良作。
観た後に何かぐっと心に残るかと言えば微妙だが、日本でももっと上映館が増えればヒットしそう。
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