ちろる

ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくるのちろるのレビュー・感想・評価

3.6
ロシアアニメーション作家のユーリー・ノルシュテインの制作を追ったドキュメンタリーですが、日本人監督が作っているためか、非常に観易い構成となっている。

30年かけても完成に至らない文豪ゴーゴリの《外套》という作品の進捗状況について聞くために、日本のカメラマンが海を渡り状況を探りに行くというちょっとユニークなドキュメンタリー。

才谷監督を優しく迎え入れるユーリー・ノルシュテインは、テンション高めにこの《外套》の物語の世界について喋り出すが、彼のデスクにある夥しい数の絵コンテだが、これらは幾度となく描き変えられてるという。
そんな熱く情熱を注ぐ作品についていつ完成するのかを聞いても
「答えられない。」と言うユーリー。
彼にとってこの不器用な主人公アカーキーはまるで自分の分身のような存在になり、いつしか街中のそこら中でアカーキーの亡霊を探しているように

いつのまにかゴーゴリの研究家となってしまったようなユーリー。

全ての喜劇の中に悲劇がある。
しかし色々よく答えてくれるなぁー。

ロシアの宮崎駿のような大御所で、こういう繊細なアニメーション作家ってもっと気難しい人だという固定観念があったけど気のいいじいさん。
アトリエもとても小さくて、決して裕福ではない生活をしている。
多分元々欲がないから死ぬまできっとこのアトリエにいるのだろう。
こんなに温めてる《外套》、こうなったら絶対観たいよね。
どうか完成までお元気で・・・
途中から、監督がしつこすぎて、同じ日本人として恥ずかしくなった、彼の話すのがなければもっと素晴らしいドキュメンタリー。
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