その時の自分は彼女にどのように嗅ぎとられていたのだろうか。
人の形をしているが異形な者である主人公ティーナ。彼女は異常な鋭い嗅覚を持っており、匂いのみならず人の心の変化を敏感に嗅ぎつけることができる特殊能力者。自分はそんな見た目より疎外感をうけている孤独な彼女と出逢った男ヴォーレの奇妙なラブストーリーだろうと勝手に予測立てていた矢先、中盤手前でヴォーレの存在が徐々に明らかになったシーンで胸が締めつけられた。それは罪悪感と恥ずかしさからくるものだった。これはまたヴォーレの物語でもあると思った瞬間、安直な展開予測は彼方へ消え去り、外見で判断し嫌悪の目で見る人たちとなんらかわらない感情でヴォーレを見ていた自分がいたことに気づき恥じた。中盤以降はその思いから頭は空白となり物語の行く末を委ねるしかなくなった・・・
と、途中まで思ったが後半のストーリーは比較的わかりやすい所に着地した。とはいえ最後ティーナが何を選択し、救われるかどうか行先を見守る展開は非常に入り込めた内容だったし、難しくもなく大人が楽しめるファンタジーとして良い余韻が残る作品でした。
