t0mori

イン・ザ・ハイツのt0moriのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
4.7
都内唯一の上映が続く、Dolby Cinema版を丸の内ピカデリーで観てきた。

これほど軽やかに嫌味なく、人種差別や過酷な移民の生活を活写した作品を知らない。まず以って今の生活に不満はあれど、一切否定しない感じも良い。むしろそこで生きる住民を誇りに思い、賛歌として歌い上げてみせる。
そして何と言ってもミュージカルならではの、観ているだけで溢れ出す多幸感。
音楽が素晴らしいのは言うに及ばす、それに伴うダンスのキレ、センスの良いモンタージュに特殊効果、抜群の色彩センス、どれを取っても素晴らしかった。

作品そのものも大変に良かったのだけど、
Dolby Cinemaで観られたのが、本当に幸せな時間だった。

中盤の停電の一夜の、漆黒の闇も期待通り良かったのだけど、ファーストカットの女の子の黒髪のふわっとした立体感を始め、考えてみればほとんどのキャストが黒髪か黒髪をベースにしたカラー染めなので、特に女性の髪と耳の奥の奥行きや深みとか、3Dかと見紛うばかりの立体感。昼間や何度か訪れる日暮れの表現も、全体に自然光重視の照明設計なこともあって、これが黒の階調が高いだけで、こんなに立体的に生き生きとするのか、と感動した。一昨年の『ジョーカー』以来のDolby Cinemaだったけど、あれよりも恩恵を感じた作品。
t0mori

t0mori