ハナカズキ

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜のハナカズキのレビュー・感想・評価

4.0
1960年代のミシシッピ州を舞台にした人種差別を扱った映画です。白人家庭でメイドとして働く黒人女性たちと作家志望の白人女性ユージニアが、社会に根強く残る差別意識を変えようと一歩を踏み出すお話でした。

少し前に見た「風と共に去りぬ」では、南北戦争で奴隷制度はなくなってしまったと言っていました。それから100年後の1960年代が舞台のこの映画、どう見ても堂々と奴隷制度がまかり通っています。アメリカ南部では100年間時が止まっていたのでしょうか?目を疑いました。

そんな奴隷制度がまかり通る南部でメイドとして働く黒人女性たちの声をまとめた本を出版するお話なんですが、人種差別の映画を見るといつもいつも高慢な白人様の態度に心の底から腹が立ちます。この映画はそれに重ねて、女性コミュニティ特有の、女性のいやな面もたっぷり描かれています。ブライス・ダラス・ハワードのいやな女っぷりがすごい!

テーマとしてはシリアスですが、重くなり過ぎずコミカルテイストも織り交ぜながらお話が進んでいきます。今も人種差別は残念ながら完全撤廃とはいきませんが、この1960年代に比べると随分と改善されていると言えるでしょう。それはこの映画に登場する女性たちのような勇気が積み重なり、社会が動いてきたのだと思います。

唯一残念な点は、この物語の主役は間違いなくメイドとして働いていた黒人女性達なのに、映画としては白人女性のユージニアが主役っていうところ。結局アメリカ社会の主役は白人なの?こんな時代にこんな善良な白人がいましたよっていう話になってしまっているじゃないか、とも思ったのも事実。

とは言え、ユーモアを交えた素敵な感動物語でした。
ハナカズキ

ハナカズキ