デイジーベル

レオンのデイジーベルのレビュー・感想・評価

レオン(1994年製作の映画)
3.9
『凶暴な純愛』

リュックベッソン監督作品。リュックベッソンと言えば〔つまらない子供向け映画を作る人〕〔ハリウッド映画の劣化コピーを大量生産する人〕〔フランス映画を興行的に蘇らせたが質をアメリカ映画の底辺に押し下げた人〕などという低評価を耳にするが「ニキータ」や「レオン」に於ける″情緒感″などは我々日本人には合うと思っている。そして今作は個人的にはそんな悪評で観ないのは勿体ないのではないかと思える作品。そこで個人的に、今作に感じる″魅力″をいくつか紹介したいと思う。
※このレビューはリュックベッソン食わず嫌いの人に向けたレビューであり、観た上で嫌いな人や、元々今作が好きな人には特に意味の無いレビューの可能性が高い。


恋愛映画に苦手意識がある、私が観れる恋愛映画(語弊があるが)であり、魅力的でイカレた登場人物が単純な物語を魅力的にし、スティングによる音楽がこの作品の世界観(イメージ)を決定付けている。決定的に何かが欠けている2人のぎこちない関係には儚さと美しさを感じる。

「私が欲しいのは、愛か死よ」
当時13歳のナタリー・ポートマンがヒロイン″マチルダ″を魅力的に演じた。大人びた容姿と雰囲気を持つ彼女が見せる、無邪気さや子供らしさ、強さに魅了される。(その後、大女優に成長して行く事からも今作が重要な作品である事は疑いようが無い。近年では「キックアス」におけるクロエグレースモレッツが同じような位置付けと言えるだろう。そして「タクシードライバー」におけるジョディフォスターが先駆けと言えるのかも知れない)

「死んでもいいという人間の命を奪っても面白くないからな」
麻薬捜査官でありながらイカレたジャンキーの″スタン″を演じたのはゲイリーオールドマン。登場時間はそれ程長くないにも関わらず、インパクトとキャラが強烈な為、非常に印象に残る。(映画においては徹底した悪やクズは愛されるべき存在なのかもしれない)そして彼無くしてはこの作品がここまで愛される作品にはなり得なかったと言っても過言では無い気がする。

「″オーケー″と言うのはやめろ!オーケー?」
更に殺し屋なのに純粋でキュートな″レオン″をジャンレノが魅力的に演じる(彼の″幼さ″が彼女の大人びた魅力を助長しているとも言える。逆も然りだ)
唯一の友達(親友)の観葉植物「アグラオネマ」を自分の分身の様に大切にしている。「孤独な男=観葉植物」というイメージを確立した作品ともいえる(エドガーライト監督作「ホットファズ」でも孤独なエリート主人公が観葉植物「ピースリリー」を大切にしていた。今作へのオマージュなのかも知れない。)

今迄感情を抑えて、敵わない犬には噛みつかない″慎重さ″で巧みに生きてきた孤独な男が、″守るべき大切なもの″と出会い、″感情″を抑えられなくなる事で敵わない犬に噛みついてしまう。そこに私は″自由″や″愛おしさ″を感じてしまう。


スティングによるエンディング曲「Shape of My Heart」は、歌詞も含めてレオンに捧げるレクイエムと言えるだろう。我々の物悲しくも切ない感動の余韻を増長し、この作品のイメージ(雰囲気)を完璧に決定付けている。(それは「スティング=レオン」という連想イメージが確立してしまう程だ)



◯雑記◯
「牛乳好きの殺し屋」レオン。エンディング曲を歌ったスティングの実家は牛乳屋だったらしい。そして私は子供の頃から牛乳好きだ。(食事の時はカレーだろうが何だろうが基本的に飲み物は牛乳という筋金入りだ)ひょっとしたら″牛乳好き″は避けて通れない作品と言えるのかもしれない。 _(┐「ε:)_