《俺たちどこにも行けないのかな?》
〝私の居場所はここしかない〟〝そんな考え方やめた方がええよ〟〝外に出ても秀さんと一緒だったりして〟〝悪い冗談やなあ〟〝いや本気で思っているよ。表に出られたら…〟
精神科の〝閉鎖病棟〟というと、入院患者や面会者が自由に出入りできないように出入り口を施錠し、入院しているのは、興奮して暴力をふるったり、錯乱して奇声を発したり暴れたりするような患者さんだと思っていたら…。本作の面々は、クセの強いちょっと変わった人たちではあるけど、そこまで重度って感じはしないし、看護師さんの付き添いもなしに自由に外出していて、閉鎖病棟って感じは全くしない。むしろ、そこまで自由にさせて大丈夫なのって心配になるほど。
それに、死刑囚だった梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)はもともと精神病の疾患はないし、塚本中弥(綾野剛)は本人の希望があれば自由に退院できる任意入院の患者だし、引きこもりの女子高生の島崎由紀(小松菜奈)も騒ぎを起こさなければカウンセリングを受ける程度で済むはずだったので、なおさら。
ただ、自分たちはどこにもいけない、居場所はここにしかないっていう彼らの思いを〝閉鎖病棟〟という言葉で表しているのだったら分からないでもないけど。
他にも、重度の認知症の筈のオカンがめっちゃ元気に庭いじりをしてたり、婦長さんが家族に対して再発の可能性はないと言い切ったりして不思議ポイントは多いけれど、笑福亭鶴瓶さん、綾野剛さん、小松菜奈さん達の演技は素晴らしく、それぞれに事情を抱えた人たちの群像劇として見応え十分。
閉鎖病棟で起きた胸が締め付けられるような悲しい事件だけど、キャッチコピーの〝その優しさを、あなたは咎めますか?〟ってどうなんだろう。確かに、演者のあまりの熱量に彼らに共感し、あの選択を肯定したり、仕方がなかったと思ってしまいそうになるけど、やっぱ、だめなものはだめなんだよなあ。
視聴メモ:2023.05.07/085/図書館DVD