80年代は民放の深夜帯でよく映画をノーカットで放送していた。本作もその頃に初見して大変感銘を受けたのだけど、その後BSや配信にてお目見えすることもなく、録画したVHSは見つからず。
であればディスクで買ってしまおうと調べたら、1927年製作、ほぼ100年前(!!)ということもあって、なかなかの混迷具合。大きく分けると
(1)オリジナル版・・・ドイツ製の白黒無声映画、クラシック音楽がBGM、ドイツ語字幕
(2)アメリカ公開版・・・上映用に短くされた、英語字幕
(3)1984年公開モロダー版・・・彩色され、別のBGMを乗せたもの
(4)2001年ベルリン映画祭公開版・・・オリジナルのBGMにドイツ語字幕
(5)2008年完全復元版・・・150分のオリジナルに近いもの、所々画質が悪いらしい
ちなみに上記でいう「字幕」とは、無声映画なので台詞を後出しで映す字幕のこと。
(1)と(2)は戦争などでフィルムが紛失し、今では観ることは不可能。であれば(3)〜(5)となるが、全体のバランスがいいとされている(4)をチョイス。運良く、評判の良い紀伊國屋版DVDが中古で買えた!
前置きが長くなったが、軽くストーリーを紹介すると・・・
2026年のメトロポリス、上流階級は地上で優雅に暮らし、その生活を支える労働者階級は地下で身を粉にして働いていた。地上で暮らすフレーダーはそんな生活に違和感を感じ、ある日地下世界へ侵入、そこの教会で人々に癒しを与えるマリアに恋をする。。。
以下、ネタバレ感想
冒頭に表示される字幕「脳と手は心で通じなければいけない」、最初は意味がわからなかった。ロボットのことを言ってるのかな?くらいに感じた。実は本作は壮大なSFの中に労使関係を盛り込んでいるのだ。
脳=使用者側、手=労働者側。言い方を変えればホワイトカラー、ブルーカラーとも取れる。ここ数日で混迷を極めるアメリカ大統領選挙、ここでも労使や人種など理由は多々あれどアメリカを分断することが起こっており、非常にタイムリーな作品を観たと感じた。
テーマは恒久的であるものの、100年も前にそれをSFで表現していたことが凄い。冒頭、労働者の勤務交代で、退勤者の1歩が出勤者の2歩を表す行進シーンがある。それだけですっかり世界観にハマってしまった。セットは今の時代ではチープに見えるかもしれないが、白黒映像でチープさは薄まり、大量のエキストラで大迫力のシーンが多いのも見どころ。
長くなり過ぎたのでこの辺にて。映画好きSF好きな方は必見! 上記選択肢が参考になれば幸いです。