高橋早苗

ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳の高橋早苗のレビュー・感想・評価

4.5
脱原発デモの隊列に
カメラを向ける姿

同じくカメラを持つ
“後輩”たちへ放つ言葉
『問題自体が法を犯したものであれば
 報道カメラマンは法を犯してもかまわない』

そして 南相馬
瓦礫の山の前で カメラを構える



…カッコええー
惚れ惚れするわ。


軍国青年だった20代
ほんの数日ずれたが為に
原爆を逃れ 迎えた終戦

そして「嘘」に
カメラを向け始めた


・・・ひとつ驚きなのは
広島で
被爆者を捉えた写真で 賞を受けてから
プロになったんだね。

祝島が出てきて ドキッとした。
そうか。そこにつながるのか。


原爆の犠牲者達から始まり
安保闘争
自衛隊
三里塚
公害
そこに写るのは、いつも

戦う人たち、だ。

平和ボケの
このアタマがクラクラする
・・・カッコええーとか
言ってる時点でボケてるもんな<苦笑


老犬ロクとの ふたり暮らしでみせる
飄々とした様は
ほのぼのした風にも感じられるが

歯に衣着せぬ
その言葉は容赦ない

その姿勢は
暴漢に襲われ 重傷を負っても
自宅に放火されても
変わることはなかった



そして、フクシマ。
『表に出ないものを引っぱり出して、たたきつけてやりたい』

執筆中の原稿が
ヒロシマからフクシマへ
繋がったのはこれも
必然、だろうか。



ラストは
初めて撮った被爆者
杉松さんの墓参りをする菊次郎さんだった

墓の前に座り込み 長い長い沈黙の後

『ごめんね』

と一言だけ



その声の弱々しさに
シャッターを切ったその数
25万枚ともいわれる 膨大な“真実”の
沢山の思いが 見え隠れしているようで


エンドロールが始まるそばから
もう一度観たいと思った。


☆☆★
(結局、3回観た)


「敗戦」って言葉に
ドキッとした。
・・・当事者にとっては
「終戦」ではなく
「敗戦」なんだ
と気づいて

私にとっては
教科書で習った「戦争」だから
「終戦」だけど。



同じように
「ごめんね」の言葉は
あの時からずっと

ご本人の中では変わらず
“いま”なんだと 気づいて
ますます泣けて。

だけど悲しいんじゃなくて
なぜか 希望を観ちゃうんだな。
高橋早苗

高橋早苗