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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのKUBOのレビュー・感想・評価

4.2
今日の試写会は『システムクラッシャー』マスコミ試写。

教育に携わってきた者として、たいへん複雑な思いで見た。

「システムクラッシャー」とは”あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供”を指す隠語なのだそう。

本作の主人公である女の子ベニー(9歳)は、思い通りにならないことがあるとすぐ暴力を振るい、過去のトラウマから実母以外の人から顔を触られると狂ったように暴れ出す。

ベニーに手を持て余した母親は、ベニーをケアホームに入れたり、里親に出したりするが、ベニーはすぐに問題を起こしては転々としてきた。ひどい時には精神病院で拘束衣を着せられたりもする。

そんなベニーをなんとかしようと、通学付添人のミヒャは、ベニーと3週間、山小屋で暮らすことを提案するのだが…

私も学校で数多くの生徒と接してきた。その中には喧嘩っ早い子や、日常的に嘘をつく子や、気がつくと私の手を握ってる子やら、いろんな子供たちがいたけれど、ベニーはそんなレベルじゃない。

何か気に入らないことがあると、すぐに絶叫して大暴れ。ケアホームの人たちは基本的にみんないい人たちだけれども、ここまでテンパーだと中途半端な職業意識では対応できない。昭和の時代だったら(男の子だったら)張り倒してただろうな。

じゃあ何でベニーがこんなにテンパーかと言えば、それは愛情の欠如以外の何ものでもなくて、「ママー!ママー!」と迎えには来ない母親を求める姿は痛々しいし、吠える犬に吠え返すシーンで思ったのは、この子の攻撃的な言動は怖がりな犬と同じなのだろうな、と。

このベニーを演じた子役「ヘレナ・ツェンゲル」は本作でドイツ映画賞主演女優賞を歴代最年少で受賞。作品自体もベルリン国際映画祭で銀熊賞ほか、各国の映画祭の37部門で受賞を果たしている。

ミヒャの思いはベニーに届くのか? 安直な希望を見せないラストはどんな未来へと続くのか?

『システムクラッシャー』は4月27日、全国順次公開予定です。
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