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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのrebのレビュー・感想・評価

3.5
9歳の少女ベニーは児童虐待のトラウマから、時に感情のコントロールが出来なくなる問題児。学校にも馴染めず、里親やグループホームを転々としている。
彼女の願いは大好きなママと暮らすこと。
日本でも9歳児は「9歳の壁」「中間反抗期」「ギャングエイジ」とか呼ばれる。
自分を客観視できるようになり、心の葛藤から反抗的な態度をとると言われているが、ベニーの行動はそんな生易しいもんじゃない。
ドイツ出身のノラ・フィングシャイト監督は、ホームレスのドキュメンタリーを撮っていた時に、こういう「システム・クラッシャー」と呼ばれる制御不能で攻撃的な子がいることを知り、映画化した。
ベニーの怒りのパワーは凄まじく、パワフルで凶暴な野生動物のようだ。
シングルマザーの母親は、幼い弟や妹もいるので、彼女といっしょに暮らすことを躊躇する。
この、時間にルーズな責任感の無い母親にはイラっとした。
母親の愛に飢えているベニーに、たまに会ってベタベタするのはは逆効果だ。
施設のリーダーであるバファネも、一緒に暮らせないということを、母親が自分の言葉で彼女に伝えるべきだと言っていた。
暴れると手がつけられないベニーだが、小さい子には優しく、面倒をみたりする。
そして自分が心を許したバファネや通学付き添いのミヒャには全力で甘える。
しかし、結局いつも何かしらの事件を起こしてしまい、病院へ強制連行されてしまう。
今度こそ今度こそと観客は期待して観るが、そうそう彼女は変わらない。
全ての大人達を巻き込み、全ての規律をぶっ壊してベニーは生きていく。
ドイツは欧州における移民受け入れの先進国だが、ベニーを持て余した大人達が、彼女を自国からケニアに移住させるという決断を下したというのは、なんとも皮肉なラストだった。
ベニー役のヘレナ・ツェンゲルは、動と静の演技が見事だった。この後「この茫漠たる荒野で」でカイオワ族に育てられたドイツ人少女役でトム・ハンクスとがっつり組んで素晴らしい演技を見せてくれている。
さすがです!
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