画面越しに漂ってくる腐臭に辟易とするが、よく目を凝らすとその不快感が緻密な設計と確かな演出意図のもとに〈再現〉されたものであると気付かされる。
実在の資料を基に作り込まれた背景美術とプロップの数々、それらに命を宿すライティングの妙。
計算されたカメラワークによるワンカット長回しの殺人シーン。
高い演技力と特殊メイクによって造形された、あまりに幼稚で狂気的な人物像。
学生カップルの淡い恋の行方をサイドストーリーに据え物語を推進させる構成も洒落ている。
蛆の湧く屍体に宿るファティ・アキンの映画美学に魅了された。
醜い老婆ばかりを手に掛けるホンカについ「あの女学生はまだか」と期待してしまう。
ラストショットで己の内に秘めた残虐性にハッとさせられたのは僕だけではないと思いたい。
