コマミー

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのコマミーのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

【酒と老婆】

※あらかじめ、伏せさせていただきました。


"ファティ・アキン"と言えば、感動的な人間ドラマや情熱的なラブストーリーを描いているイメージの監督だった。
そんな監督の最新作が、こんなシリアスキラーが出てくる作品とは驚きだった。しかも実話で、主人公の"風貌"の事もあり、とても気になっていた作品だ。

ドイツの"ハンブルク"で起きた、中年男性による"実在の猟奇殺人事件"を映画化したらしい。
しかも必ず、彼の行きつけのバー「ゴールデン・グローヴ」に居座っている酒浸りの"老婆"を狙っていた。[自分と同じ]、[寂しい人生]を送っている年老いた女を狙っていたのだ。
[]で囲んだ言葉にある通り、フリッツ・ホンカという男は、とっても悲しい男で、過去に何があったか知らないが、毎日酒浸りの人生を送っていた。そして"酒"と老婆が持つ"弱み"を原動力にして、老婆を"家に誘い込み"、ナニが立つわけではないが"セックス"をし、気に入らなければ"滅多打ちにして殺す"と言う過程を繰り返していたのだ。

ここまでして逃げられたのが奇跡だが、ただ、自分はこの男のしている事を見て、グロい…気色悪いを越えて、"悲しく"なってしまった。不幸と言うべきなのか、最低と言うべきなのか、本当に"複雑"な気持ちにさせる。そうこれは、「ジョーカー」や「ハウス・ジャック・ビルド」を観たときと同じ感覚だ。
……「じゃあ、これも一種の芸術として観るべきなのではないか?」と思う人もいるかもしれない。
だが、この作品の場合違った。

"別物"である事は間違いないのだ。彼は実は、ある目的に近づけながら、一度は"変わろう"としていた。
あの二人と違うところは、現実の殺人鬼という人間は、人間味がどこか"片隅"に残ってはいるらしい。

だから尚更、この男のしてきた事を見る度、思い返す度、悲しくなってしまった。

僕はこの作品を観たあと、「こんな悲しい人生は送りたくない」と、切に思いました。


とても湿ったい気持ちにさせる作品でした。
コマミー

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