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屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
下には下がある。
シリアルキラー界最下層の男

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連続猟奇殺人犯ってレクター博士やテッド・バンディ、チャールズ・マンソンらイメージで、超絶IQの持ち主で周到な計画で常軌を逸した欲望を達する人だけど、本作で描かれる実在した殺人鬼フランツ・ホンカの行き当たりばったりっぷりったら救いがない。

カリスマ性もない、ただの醜い孤独なアル中・中年オヤジで親近感が湧いちゃったのが悲しい。事故の影響もあって鼻が潰れ、大きく後退した前髪前線、乱れっぱなしの歯並び、歪んだ背中……「ノートルダムの鐘」のカジモドみたいだけど、見た目以上に中身が酷い。見た目の悪さには同情したけど、歪んだ自意識や暴力性には全然共感できない自分がいてホッとした。

周到で大胆な犯行を重ねるような知性はなく、かといって野放図に凶行を繰り返し、逮捕されることを恐れない胆力はない。自分の置かれてる惨めな現状を認識できる程度の自意識はあるけど、そこから抜け出すための自律ができない。何をやっても中途半端で、誰からも蔑まれ疎まれる男。うーん悲しい。

行き当たりばったりな上に死体を処理する術もないから、乱雑な部屋と同様、雑に切り刻んで壁の穴に放り込むだけ。当然腐臭に悩まされ、階下のギリシア人ら同居人たちに苦情を言われる始末。当然住んでる自分も臭いはずで、ガムテープで穴を塞いだり日々芳香剤が増えていくバカさ加減がバカすぎてちょっと可愛い。
凶行を繰り返す最低最悪のクソ野郎のハズなのに、時折ペーソス溢れる愛おしいおっさんに思えるの不思議。

おっさんの孤独を切り取るドキュメンタリーのようであり、うまく生きられない悲哀をロングショットで捉えたコメディでもあって、歪んだ背中と自意識に突き動かされるシリアルキラーのサスペンスでもある。

思うにファティ・アキン監督の過去作「ソウル・キッチン」で描かれたような、上手に生きれず世の中に居場所がない人や、自分が自分であることをコントロールできない人への共感に似た視点のせい。

社会の底辺でゴキブリのように蠢く男が、さらに弱い立場の存在を辱しめ殺していく負のスパイラル。救いも同情もなくて、ダメが行きすぎて笑えてくるのなんだろう?

フリッツ・ホンカを演じたヨナス・ダスラーは実在の殺人鬼とは似ても似つかぬ23歳のイケメン。特殊メイクでフリッツ本人そっくりに似せるだけじゃなく、仕事も友人もなく孤独な中年を好演。
ヨナス・ダスラー自身の持ち物と思われるイチモツもご開陳。一般的なサイズ感でだらしなくブラ下がる姿がフリッツ・ホンカの自堕落な姿の暗喩みたいで愉快だった。


20本目
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